第917回 ポーランド・リトアニア ヒストリーツアー ①
今年の夏休みに、本校は海外研修の機会として、カナダセミナー、オーストラリアセミナー、韓国英語村ツアーを行います。これは継続して実施するプログラムですが、更に新しい独自の海外研修ツアーを導入するので、今日はこのツアーについて紹介いたします。
それは「早大生と行く!ポーランド・リトアニア ヒストリーツアー」です。行き先はヨーロッパのバルト海に臨むポーランドおよびリトアニアであり、“北東欧”と呼べる地域にある2か国です。コペルニクス・ショパン・キュリー夫人など著名な偉人の出身地、激動の歴史で知られるポーランドと、旧ソ連から独立したバルト3国のうち一番南に位置するリトアニア。隣接する両国は文化的にはまずカトリック圏にあります。
第二次世界大戦において、両国は旧ソ連軍やドイツ軍の侵攻を受けて、数多くの民衆が犠牲になったことでも共通しています。その時代に日本人の外交官が勇気ある人道行為を行って歴史にその名を刻みました。
その人物は、杉原千畝氏です。杉原氏は、当時外交官としてリトアニアに赴任し、外務省の指示に背くかたちで、迫害から逃れてきたユダヤ人に日本通過ビザなどを発行して約6千人の生命を救いました。世界中のユダヤ人やイスラエルの国民にとって、杉原氏は後世に語り継ぐべき大恩人のひとりです。
現代では杉原氏の行動は「人道」を貫いた勇気ある行動として賞賛されていますが、大戦後は指示に背いたことで外務省を退官させられ、藤沢市鵠沼の地に住まわれることになりました。そして杉原氏のご子息お二人がこの湘南学園に在学されるというご縁がありました。
湘南学園の立地するこの鵠沼という地域には、これまで多数の文化人や著名人が住まわれていました。杉原千畝氏はそのお一人なのです。そのご縁も生かすかたちで、多感な中高の在校生諸君に、歴史に学び、グローバル時代の今後の課題を考えることのできる、貴重な「ヒストリーツアー」を組めないかと本校の教員が考えたのが、今回のきっかけになりました。在校生や卒業生とその保護者の皆様にも、この鵠沼という地域への関心や誇りを深めてもらえたらという思いにもつながりました。
このツアーの柱の一つは、杉原氏が当時活動したリトアニアのカウナスを訪問し、その歴史事実を深く学ぶことにあります。杉原氏が、自分の地位や身の危険にもつながる環境の中、一人でも多くのユダヤ人の生命を救いたいと決意して実行した人道的行為から、グローバル時代における「世界市民」としてのあり方について深く学べることでしょう。民族や国家をめぐる様々な対立や確執がまた再燃する現在こそ、機を得た深い学びになることを期待しています。
(明日へつづく)