高1 大学模擬授業
12月13日(土)に、高校1年生は通常授業ではなく、1校時から3校時まで大学模擬授業を受講しました。
「大学の授業ってどんなものなんだろう?」
「中学や高校の授業とは違うんだよね?」
「なんだか面白そう」
高校1年生はまさにこれから文系と理系の選択をするタイミングであり、大学の授業を体験できることで、大学進学に対するモチベーションの向上にもつながることでしょう。また、教科学習とは違う知識の習得の楽しさ、そして専門的な講義内容は好奇心を掻き立てることまちがいありません。
今回は様々な大学からたくさんの先生方にご来校いただき、授業していただきました。講義をしてくださった先生方、本当にありがとうございました。
ある教室では「愛犬のしつけ」を題材に、動物の生態について講義が行われていました。どのように教えると、どのように犬が学習をしていくのか、ということを映像を用いながら説明していました。「朝一番に愛犬の背中に後ろから乗っかる」と「私(ヒト)の方が上なのよ」ということを示すことができ、とてもしつけには効果的というお話。他にも、
「愛犬が言うことを聞かないと思ったらまずおばあちゃんやおじいちゃんを疑ってみましょう。たいてい甘やかしています(笑)」
といったユニークなお話も織り交ざって、生徒たちもとても楽しそうに授業を受けていました。身近な題材がテーマであり、教科学習とは違った知識の習得を楽しんでいる様子が印象的でした。
別の教室では、「今求められる『教育』とは?」というテーマで講義が進められていました。「勉強はなぜしなければならないのか」という誰もが一度は疑問に持つ問いをきっかけに、今の日本の教育を改めて考えます。授業内で、問題が1つと点数を書く欄が用意されたプリントが配られたのですが、生徒たちはみな無意識に「これはテストだ」と思い、ほとんどの生徒が無意識に良い点を取ることを目的として回答をしたはずです。そして、いざ先生から点数の付けられたものが返ってくると、高得点を獲得した生徒は喜び、低得点を取った生徒は少し落ち込みます。しかし点数自体は「適当につけたもの」と明かされると、「えーっ」という声が。このようにプリントの書式からテストと感じたり、点数が高いと喜んだりするのは、日本の教育的文化が形成した習慣であり、自分のために何かを学ぶという姿勢よりも、他の要因が優先された状態で学習活動を行っている1つの例と言えるでしょう。日本の子どもがあまり勉強を楽しいと感じておらず、好きでもないのでやっている、そして学ぶことに関して消極的である、という状態であることに言及しつつ、この「学びのレリバンス(関係)が低い状態」を改善することが大切であると説明します。「役にたつ」といった感覚を持って学び、そして「楽しい」意味のある学びをどのようにこれから作っていくか…。難しいテーマではありましたが、生徒たちも真剣に聞いていました。
先日のノーベル賞受賞の記憶もまだ新しい「LED」をテーマとした講義もありました。LEDの光は、化粧用の照明から街を彩るイルミネーションまで身近な場所で使われていて、例えば漁船ではLEDの光を海底にまで届く性質の光に変えて活用しているとのこと。また、液晶テレビを用いた実験は、偏光フィルムが無いと液晶テレビを見ることができないことが示されたのち、偏光フィルムの役割を持つ「液晶メガネ」を装着することで液晶テレビに映し出される映像を見ることができるようになるというもの。これには生徒たちから「オーッ」という声が聴こえてきました。LEDならではの利用法や可能性について実験を交えながら、高校1年生にもわかりやすい語り口調とテンポで語られたとてもワクワクさせる講義でした。
他にも「スポーツ」について「スポーツは意味も価値もなく透明なもの」と、改めてスポーツについて考えさせられる講義、ヒトの脳の活動の様子を測って、ヒトが見ている映像や考えていることを読み取る最新技術に関する講義、子どもたちもよく知っている映画『となりのトトロ』に登場するメイを題材に、発達段階や心理的側面を学びながら、幼児教育・保育で求められる大人の関わり方を考えていく講義など、どの講義も普段はなかなか聴くことのできないものばかり。「メディアリテラシーの今」というテーマの講義では「テレビ業界に進むためには文系と理系のどちらがよいのでしょうか?」という自分の進路を見据えた質問が出るなど、積極的にこの貴重な時間を有効活用している生徒もいました。この時期に、こうした専門の先生方からお話を聞くことができるのはとても意義があることと改めて実感します。
今回の「大学模擬授業」は、子どもたちの進路選択において重要な意思決定の材料になったことでしょう。自分の近未来をイメージすることで得られる新たなモチベーションを力を変えて、大学進学という目標だけでなく、その先の未来において「自分が何をしたいか?」「自分にとって価値のあるものは何か?」という興味や関心についても再度考えてほしいと思います。普段の高校における授業では決して学ぶことはできない内容は、社会との結びつきを意識させるものであったはずです。
今回の数時間で大きく考え方が変わるということは少ないと思いますが、少なくともこのような啓発的な経験は、主体的に進路を選択する態度の形成につながると考えています。そして、自分の将来のライフスタイルをイメージして、自分自身の持つ価値観を実現していくという「生き方を考える」機会にもなり得たことでしょう。
将来設計や進路計画を立てることは、とてもエネルギーの必要なことです。同時に、自分の人生において非常に重要なことでもあります。今回の機会を「なんとなく大学の授業を受けた」で済ますのではなく、自らを見つめなおす機会と捉え、これからの進路選択に役立てて欲しいと心から願います。