第1253回 米国のリベラルアーツ・カレッジ

2016年1月27日

昨日のつづきです。昨年夏に訪問させて頂いた米国のトップ名門大学の中には、リベラルアーツ・カレッジがいくつかありました。

アマースト大学やウェルズリー大学などです。わずかな時間に接しただけですが、恵まれた教育環境と教育の深い志に感銘を受けました。

こうした大学は、徹底した少人数教育がまず特徴であり、全寮制の場合も多いようです。

小さな地方都市や郊外・田舎に立地し、学生生活の大部分はキャンパス内で送られ、勉学に集中できます。学生数に比べて教官数がとても多くて面倒見が良く、学問の基礎を習得し思考力や表現力を鍛える教育に専念されています。

米国や海外の上流・中流階級の親はわが子がこうした名門校で自分の将来をじっくり考えるべく大自然の中で勉学に励むことを望み、同窓生達は卒業後も強固なつながりで結ばれ、ビジネスや私生活で支え合います。

上記のアマースト大学の卒業生には、日本のキリスト教史で名高い新島襄や内村鑑三がいます。ウェルズリー大学には、次期米国大統領の最有力候補であるヒラリー・クリントン女史がいます。

豊かな樹木と芝生に包まれた広大なキャンパス、歴史の年輪を感じさせる素適な校舎、案内してくれた大学生達の意欲に満ちた母校ガイドの様子などが、すぐに思い出されます。

 

米国のリベラルアーツ・カレッジはその多くが小規模な私立大学です。高い学費のハードルがありますが、独自の奨学金制度を通じて社会的・経済的弱者層にある学生の受け入れに熱心な大学もあります。

私が訪問した範囲では中国を筆頭にアジア系の留学生も驚くほど多くなり、黒人やヒスパニックなど大学生の民族構成はとても広くて多彩でした。

こうしたリベラルアーツ・カレッジの教育のあり方を、日本で同様な形で実現させることは困難なことでしょう。どこでも学生数あたりの教官数は非常に少なく、立地キャンパスや運用資金の確保には限界があります。

それでも米国におけるリベラルアーツの教育像は、これからの日本の教育改革に対して重要な視点や課題を与えてくれると考えられます。(明日へつづく)