第255回 「文章力のアップ」に役立つ小さな本
今日は、最近読んだ中からある新書を推薦したいと思います。文章を書くのが好きな、または文章づくりに悩む 高校生や中学生には特におススメの本です。
『誰も教えてくれない~人を動かす文章術』、齋藤孝著、講談社現代新書2083、昨年12月に出た新書です。
「文章は何のために書くのか?」~「文章は人の心に働きかけ、動かすために書く」~「ならば、様々な局面で 求められる文章力を、できるだけ実例を示しつつ、明らかにしていこう」・・・・・・この本はそうした視座から まとめられました。
大学で多くの学生と関わってきた著者は、学生達に毎週「エッセイを書く」ことを勧めます。情報化時代、コピー時代の中で、 多くの学生達の文章が平凡でつまらない状況があり、でも一定の指導をして努力が始まると、学生の文章力が飛躍的に 向上しやすい実態が紹介されます。
それから筆者は、学生や生徒、さらにビジネスマンなど広範な人びとを念頭において、文を書く段取りの立て方、 最後の文章を決める大切さ、独自の視点の見つけ方、上手な引用の仕方など、実用的なポイントを次々と解説します。
大人には「稟議書・報告書・企画書・始末書・謝罪文」の書き方を実例にあげ、学生には「感想文・小論文・自己 アピール文」の書き方ポイントを伝えます。就活真っ最中の学生諸君には必読と思われました。また現在必須になってきた 「メール文」作成の要点説明もなるほどなるほどとうなずけました。
そして最後に「評価されるワンランク上の文章力」の鍛え方を主題に、独自の読書方法や思考方法を説明します。
一読して「読んで良かった」とおトク感のある好著です。あまりに実用的なノウハウ論も一部に交じりますが、 有無を言わせない説得力があると感じられました。
筆者の齋藤孝氏は、現在は明治大学文学部教授で、教育学・身体論を中心に学習方法や古典の入門書など幅広い 著作があります。自身のHPで「書きたいことがまるでモーツァルトのように次々と湧いてくる(!)」と記しているように、 すでに膨大な書籍や論文を発表され、テレビ出演も多い人気の学者です。
約十年前に『声に出して読みたい日本語』が大ベストセラーになり、音読の重要性についての現代的効用の提唱は 注目を集めました。個人的には岩波新書の『教育力』に感銘を受けました。「教師の力量とは何か」「教師に求められる 要件は何か、どのように育つのか」という提起と分析は鮮明で、同僚にも広く通読を勧めたほどです。
手軽な新書ですので、保護者の方々も興味をお持ちになられましたら、書店で手に取っていただければと思います。 高校生や中学生の皆さん、ぜひこの本も活用し、たくさんの文章作成にトライして、文章力アップを図って下さい。