第567回 巨大店舗の再建へ向けた協力と努力に学ぶ(続)
前回の続きです。平和堂の夏原社長は、特に心配していた中国人社員たちの前向きな姿を見て、もうやめますとは絶対言えなかったと語ります。
「ここで働いて良かったと思ってもらうためにもやっていく、一緒になって新しい平和堂を目指すと決めた」と述懐します。「本当にこの国も信じてやっぱりやるしかない」との言葉にも感動しました。州政府にも安全を守ることを約束させ、店の再オープン~復活を目指す道のりが本格的に始まりました。
平和堂は、もともと滋賀県を拠点に130店舗以上展開する、準大手のスーパーです。14年前に中国内陸部で高級百貨店をおこし、日本的挨拶、接客サービスを徹底して顧客を増加させ、省トップの売り上げを成功させました。前社長は長沙市名誉市民にも選ばれ、中国進出の代表的な成功物語をたどってきました。中国人従業員は約2千名もいて、愛社精神が浸透していたようです。
再オープンに向けては、「破壊されたテナントは戻ってくれるだろうか」「お客様は買い物に戻って来てくれるのか」「反日デモはもう再び起きないのだろうか」など強烈な難題だらけでした。しかし営業停止が長引けば自動的に毎日1700万円もの損失を重ね、従業員に給料を出して待機してもらう状況も続きます。
そこでまず1号店の営業再開の目標を10月27日と設定し、行政への申し入れ、店内の大掃除、テナント再開交渉などを急ぎ始めました。軽装備でガラスを片付ける危険な作業に黙々取り組む従業員の姿や、当初苦戦したテナント交渉の中で“平和堂のおかげでウチは大きくなれた、また一緒に頑張りましょう”と中国系アパレルの社長が二つ返事で快諾する場面が印象的でした。
再オープン延期を求める市の政府と粘り強く話し合い、緊急会議で予定通りの再開が承認される場面では喜びを共にする思いでした。480あったテナントのうち99%が再出店を約束し、店内の改装再建は前日まで急ピッチで行われ、ついに当日を迎えたのです。
9時の開店でずらっと並び「いらっしゃいませ、おはようございます」と連呼する従業員の表情は、誇りと意気込みに満ちていました。一日で約10万人もの来客に恵まれ、50人の私服警官が配備されたものの平穏に初日営業を達成することができました。オープン当日まで密着取材を続けて3日後には日本でオンエアさせた、番組編集スタッフの意気込みと使命感にも敬意を表したい思いです。
現地法人社長の寿谷氏の最後の言葉に胸を打たれました。
「これでめげていたら今までの苦労はむだになります」「一つずつ着実に克服していけば必ず光はさしてきます」「従業員が時間を惜しんで走り回る姿に、本当にパワーをもらったのです」と言って現場に戻る姿がありました。
先の見えない日中関係の中で、本当のたたかいはここからと覚悟を決めています、との姿勢に襟を正す思いでした。近隣アジアとの国際交流を深めていくべき我々の課題にとっても学ぶことの深い特集番組でした。