第637回 エイミー・マリンズさんの生き方(続)
学年末試験の第3日です。昨日の続きを記させて頂きます。義足のアスリートから、TEDの講演を経てモデル・女優となった、エイミー・マリンズさんの生き方や考え方を紹介したいと思います。
彼女にTEDから再び招待状が来ました。その後の歩みを語る2009年2月の講演を前にして、1か月以上も極度の不眠症にかかったそうです。
彼女は、演台のそばにたくさんの義足を用意しました。そして同じ設定で、6~8歳のおおぜいの子ども達を前にレクチャーをした経験を紹介します。
子どもは知らない珍しい物を見ると強い好奇心を持つものです。「じろじろ見ないように」と付き添う大人は言いましたが、自分はむしろ良く見て欲しかったし、実際子ども達は義足をつついたり、足指を動かしたり、もたれ掛かったりと興味津々だったそうです。更にどんな義足を作れるかと想像力を働かせ、家々を越えて空も飛んでいけるのでないか、と彼女を羨ましがったそうです。
エイミーが二度目の講演で主題にしたのは、「障害者への見方を変えたい」ということでした。子どもの無邪気で自由な発想の中にもポイントがある、“大切なのは「詩」です”と彼女は語ります。詩が加われば、誰も見向きもしなかったものがアートに変わったり、恐れていたものが興味深いものになり、理解してもらえるのではないかと述べます。
実際、彼女は日々の生活で様々な義足を付け替えます。おしゃれを楽しむ感覚です。こんな芸術的なデザインもあるの!ととっておきの義足を紹介します。
十数足もの義足を付け替えるたびに歩き方も変わるし、身長だって変わるのですと、「私の背は5段切替!」と誇らしげに語ります。ふだん173cmの彼女が185cmの時になる日もあり、“エイミーずるい!”と真面目に羨ましがる友達もいるそうです。
こうした生活の楽しみを伝えた彼女は、核心の主張に入ります。
“もはや障害は、克服するものでなく、今や人間の能力を広げられる可能性なのです。”“義足は、失ったものの代替ではなく、何でも出来るという自由の象徴なのです。”と。そして“「障害者」と言われてきた人が、自分の身体を自由にデザインし、どんな自分になるかを決め、変え続けることだって出来る時代が始まっているのです。”と結びました。再び圧倒的なスタンディングオベーションが向けられて講演は終わりました。
後でエイミーは、「障害という個性」について、「本当のコミュニケーション」について、心にしみるコメントをしているのでまとめてみます。
私は聴いてくれる人たちを結びつけたい。誰でも自分の持っているものが周りと合わないと感じたり、自分の個性が自分と他人を隔ててしまうと感じる瞬間がある。個性はプラスにもなるし、持て余してしまう場合もある。周りの人が皆ノーマルで、自分だけおかしいと感じる経験は誰にでもあるはずだ。
障害も1つの個性であり、消し去りたいと思っても、受けとめて前進できることもできる。・・・・・・そして人に強く訴えるプレゼンを生むためには、ただ自分自身であること、人に差し出すこと、正直にさらけ出すことが大切である。その全てに人は惹きつけられる、率直な心はお金では買えないし、本心からのコミュニケーションは、自分を拓く努力できっと築けるものです。
エイミーの講演をぜひ聴いてみて頂きたいです。興味を持たれた方は、「スーパープレゼンテーション」、「TED」、「エイミー・マリンズ」等の言葉からネットで検索してみて下さい。