オーストラリアセミナー 7日目

2013年7月29日

 今日は、生徒達はホストファミリーとまる1日を過ごす初日です。これまで6日間、エンジン全開で頑張って来たので、そろそろ疲れも出て来る頃ではないでしょうか? ゆっくりと朝寝坊して、お皿洗いや洗濯干しなど、少しお手伝いでもしながらのんびりと過ごした生徒もいるのではないかと思います。

 僕はと言うと、午前中はゆっくりとした後、午後にピーター先生と奥様のサリー先生(彼女は公立の中高で日本語とドイツ語を教えています)に迎えに来て戴き、昨日生徒達が見学したMCG(メルボルンクリケットグラウンド)に Futty(オーストラリアンフットボール)を見に行きました。Futty は、主にサッカーとラグビーと格闘技を、部分的にバスケのドリブルとバレーのサーブとを混ぜたようなオーストラリア人が最も愛するスポーツです。プロのチームは、メルボルン・シドニー・ブリスベン・アドレード・パースの5都市にあり、18チームでペナントレースを戦っています。ここメルボルンは、この Futty が最も盛んな都市で、大人も子どもも Futty と共に暮らしているような位、会話の中に Futty の話題がつきません。

 MCGには、メンバーズだけが入れるレストランや特別席が用意されています。このメンバーズになるには、約20年ぐらいの歳月がかかるのだそうです。ですから、メルボルンの Futty ファンは、子どもが生まれるとMCGメンバーズの登録を予約し、その子が成人になる位の時期に、MCGから正式な登録申込書が届くのだそうです。常に、約1,000人ぐらいの人々がこのMCGメンバーズに登録しており、彼らは、MCGで行われる Futty やクリケットを見に、メンバーズサロンにやって来て、そこで食事を楽しみながら試合観戦したり、試合のない日でもそのレストランでパーティーを行ったりすることが出来ます。

 昨年、1年間かけて世界1週旅行をして、その際に湘南学園にもやって来たケリー先生の婚約者のマークさんが、このMCGのメンバーズであるため、彼が僕達(荒木と中村さん)、そして、ピーター夫妻とスーザン学園長夫妻をこのMCGの Futty の試合に招待してくれました。僕達はなんて幸せなんでしょう! 日本人の中で、このMCGのVIPルームで食事をして Futty 観戦が出来た人は、歴代の総理大臣の中にだっているかどうか分かりませんよね。VIPルームの中では、もちろん、男性はネクタイをした正装で、コートや帽子は脱がなければなりません。まわりにいる人々はみな、gentleman の風格漂う人たちばかりでした。

 Futty の試合の方は、地元メルボルンの Collingwood とシドニーの GWS Giants の対戦でした。シドニーとメルボルンはライバル都市です。オーストラリアが連邦国家となる際に、首都をどこにおくかについての議論が激しくなされました。もちろんその候補地はシドニーとメルボルンです。両者一歩もひかないこの競争の結果は、この両都市の中間地点にキャンベラという都市を作って、そこを首都としたのです。シドニーの人々は、オーストラリアではシドニーがナンバーワンだと言い、逆に、メルボルンの人々はメルボルンが一番だと口をそろえて言います。彼らのこうしたこだわりも、僕達外国人にとっては、とても興味深いものです。

 18チームの Futty のプロチームのうち、半分ぐらいのチームがここメルボルンにあります。Collingwood は大変伝統のあるチームで、その創成期は、アイルランドから来たカトリック教徒の貧しい階層の人々がこのチームのサポーターでした。彼らの結束は大変かたく、今では、一番でs気のある実力チームになっています。その一方で、アンチ Collingwood の人々も一番多いんだそうです。ですから、今日のこの試合も、メルボルンの人々であっても、シドニーの Giants を応援する人も少なくないそうですよ。日本のプロ野球でも似たような現象がありますよね。読売ジャイアンツはとても強くて一番人気があるけど、その反面、アンチ巨人ファンも一番多いですよね。こうした感覚は、北半球であろうが南半球であろうが、人間が持ち得る共通の感覚なんでしょうか?

試合は、前半の第2クォーターが終わったところで、シドニーの Giants がリードして折り返しました。後半の第3クォーターが始まるまでの約20分間の休み時間の間に、大勢の子ども達がMCGのグラウンドに出てきて、ここを6つのコートに分けて、かわいらしいポールも立てて、ちびっ子 Futty の試合が始まりました。中には女の子も混ざっており、ふかふかの芝生のグラウンドの上での Futty の試合をとても楽しんでいました。何よりもこのちびっ子達がとてもチャーミングでした。

 後半は、メルボルンの Collingwook が猛反撃し、結果的には、135対85ぐらいの大差をつけて完勝しました。人間、ピンチに立たされても逆転目指してあきらめずに戦わうことが大切ですね。Futty の試合は、金曜日の夜から日曜日にかけて行われます。今夜のテレビは、試合結果のスポーツニュースや録画放送でいっぱいでした。恐らく、月曜日からは、メルボルンの人々の会話は、この週末の試合の話題で持ちきりなることでしょう。

 メルボルンの人々がいかに Futty を愛しているか、こんな面白い話を聞きました。先日26日(金)の夜は、ケリー先生の誕生日パーティーが開かれ、婚約者のマークさんもこれに参加しました。しかし、その晩、マークさんが応援しているチームの試合があったため、マークさんは、パーティーどころではなく、その試合が気になって気になって仕方がなかったそうです。そこで、マークさんは、パーティーの最中に、チラチラチラチラとiPhoneをのぞき込んでは、試合の途中経過をチェックしていたそうです。マークさんに、“Which is more important for you, Futty or Kellie’s birthday? ”と尋ねると、彼はとてもにこやかに“Of course, Futty is!”と嬉しそうに答えてくれました。マークさんって、本当に Nice Guy! を絵に描いたような人でした。マークさん、今日のMCGメンバーズでの試合観戦にご招待して戴き、本当に有難うございました!