シリーズ Incredible India! 知られざるインド文化 第2回「宗教事情と食のタブー」

2017年2月5日

シリーズ Incredible India! 知られざるインド文化の第二回は「宗教事情と食のタブー」を中心にお話をさせていただきます。

 

◆ 第一回のページはこちら

英語の教科書とLesson 8のタイトルをヒンディー語で書いたメモ

 

前回少しお話しましたが、インドには多様な宗教が存在します。少し古いデータになりますが、2007年の調査によるとインドの宗教の内訳は以下のとおりです。

 

宗教

ヒンドゥー

イスラーム

キリスト

シーク

ジャイナ

割合

80.5%

13.4%

2.3%

1.9%

0.8%

0.4%

 

このうちヒンドゥー教・イスラーム・ジャイナ教にははっきりとした食のタブーがあります(他の宗教に食のタブーがないというわけではありませんが、ここでは紹介しません)。有名なのが、ヒンドゥー教は牛を食べない、イスラームは豚とお酒がダメ、といったことでしょうか。一般的にはそのとおりなのですが、宗教の教義をどのように解釈するか、またどこまで適用するかは地域や個人差があります。なので、「ヒンドゥー教徒 = 牛は絶対食べない」というわけではありません。

 

ここで、本ブログ筆者が大学生時代に体験した話をさせていただきます。筆者は外国語学部出身で、留学生の友人も多くいました。ある日、友人の一人が「実家から但馬牛を食べきれないほど送ってもらったからみんなで焼肉パーティーをしよう。」と提案してきました。友人を集めていざパーティーということになったのですが、「インドの留学生誘っちゃったけど大丈夫なのか」という私の心配をよそに、インドの留学生もパーティーに現れ、嬉々として但馬牛を食べているではありませんか。でも、いきなり「牛肉食べて大丈夫なんか?」と聞けないので、全員に程よくお酒が回ったところで「インド人なのに牛肉食べて大丈夫なの?」と聞いてみました。今考えてみると大変偏見に満ちた失礼な聞き方だったと反省していますが、その答えは衝撃的なものでした。曰く「もちろんヒンドゥー教徒だから、インドの神聖な牛は食べないね。でも、これは日本の牛でしょ?ヒンドゥー教関係ないから大丈夫だよ!それにしても但馬牛はおいしいね。」これにはさすがに驚きを隠せませんでした。ただ、くどいようですが信仰は地域差・個人差があります。「牛は絶対食べない」という人もいますし、「インド以外の牛なら食べてもいいか」という人もいます。多様な考え方があるということをぜひ知って受け止めていただけたらと思います。

 

あと、イスラームのタブーも千差万別です。大学にはマレーシア出身でムスリムの教員がいましたが、コンビニのお弁当(たぶん豚肉や豚エキスが使われている)を「わからなけりゃいいよー。」といいながら食べていました。また、断食(ラマダーン)の時期でも日中にご飯を召し上がっていたので、それとなく聞いてみたところ「旅行者は断食を免除されるんだ。俺は故郷を離れた旅行者だから大丈夫。」といった趣旨のことをおっしゃっていました。また、ムスリムの留学生の中で飲酒する人もおり、理由を尋ねたところ「コーランにはブドウから作られた酒は人を狂わせるから飲むなと書いてある。だからワインは飲まない。でも、日本酒やビールなら飲んでもいい。」と言っていました。その一方で、教義を厳格に守るサウジアラビア出身の人は、アルコール類は一切飲まないだけでなく、消毒用のアルコールもNGというスタンスでした。今やムスリムも世界中にいるため、HALALといった「イスラーム適合規格」なるものも存在します。2020年に東京オリンピックを迎える日本にたくさんのムスリムがやってくることが予想されますので、このHALALに商機を見いだす企業もあることでしょう。

 

 

HALALの例:ベトナムで買ったコーヒーのパッケージ右下にアラビア文字でHALALとある

 

ただし、何度も言いますがこういった感覚は地域と個人で差が大きくありますので、一概にこうだといえません。いろんな人がいるんだということを知って受け止めてくださればと思います。

 

さて、今回は「インドの宗教事情と食のタブー」をテーマにお話してきましたが、次回の学びBLOGではインドの言語事情についてお話させていただきます。楽しみにしていてください。