シリーズ Incredible India! 知られざるインド文化 第3回「インドの言語事情」
シリーズ Incredible India! 知られざるインド文化の第三回は「インドの言語事情」を中心にお話をさせていただきます。
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英語の教科書とLesson 8のタイトルをヒンディー語で書いたメモ
インドは日本と異なり、多くの言語が話されています。特に公用語に指定された大規模な言語だけでも22言語です。以下に話者数の多いTOP10の言語を列挙していきます。
言語名 |
話者数 |
地域・特記事項 |
ヒンディー語 |
2億5800万人 |
中北部 第二言語として全国 |
ベンガル語 |
8250万人 |
西ベンガル州 その他バングラディシュ |
テルグ語 |
7380万人 |
南東部 |
マラティー語 |
7170万人 |
西部 マラータ語とも呼ばれる |
タミル語 |
6070万人 |
南部 その他スリランカ |
ウルドゥー語 |
5150万人 |
北部 その他パキスタン |
クジャラート語 |
4570万人 |
西部 |
パンジャーブ語 |
3780万人 |
西部 その他パキスタン |
ボージュプリー語 |
3780万人 |
北東部 その他ネパール |
カンナダ語 |
3770万人 |
南部 |
インドでは本当にたくさんの言語が話されています。日本では考えられないですが、家で話す言語と学校で話す言語、それに買い物で使う言語が全部違うという人もざらです。教科書に出てくるRaj Shukla(ラージ・シュクラ)という男の子は、家ではマラーティー語、学校ではヒンディー語、他の地域の人と話すときは英語と3つの言語を使うという設定になっていますが、インドでは取り立ててめずらしいことではありません。インドは多言語社会というキーワードがぴったりと当てはまります。「日本人は英語学習だけで手一杯なのに」と思っている人も多いかと思いますが、インドでは多言語を実践的に使う機会も多いですし、逆に多言語を話さないと生活できないという逼迫した事情によって多言語が学習されています。
多言語表示の看板:上からヒンディー語・英語・マラーティー語・ウルドゥー語
New Crown English Series 2 三省堂 P.100の挿絵より
その一方で日本人にとっては理解しがたいこともあります。これもまた、本ブログの筆者が大学時代に経験したことです。留学生との交流会で、インド出身の学生と、パキスタン出身の学生が私の知らない言語で会話をしていました。気になったので「何語で会話しているわけ?」と英語で尋ねたところ、インドの学生は「ヒンディー語」だと言いますが、パキスタンの学生は「ウルドゥー語だ」と言っています。その当時の私の頭の中は「?」状態でしたが、もともとヒンディー語とウルドゥー語は同一の「ヒンドスターニ語」というものであり、ヒンドゥー教の人はデーヴァナーガリー文字を使うヒンディー語を話しますが、ムスリムの人はアラビア文字で表記されるウルドゥー語を話します。文字だけを見るとまったく違う言語のように見えますが、言語の中身はほとんど同一と言う事ができます(同じような事例が、セルビア語とクロアチア語についても言えます。正教を信仰するセルビア人はキリル文字で表記されたセルビア語を使いますが、カトリックを信仰するクロアチア人は普通のアルファベットで表記するクロアチア語を話します。この場合も宗教によって文字が異なっており宗教と文字の結びつきの強さがうかがえる)。つまり、外国語を勉強したというわけではないのに外国語がしゃべれるということなのです。世界の言語にも親戚関係があるので、近い親戚の言語はわかってしまうというからくりです。「では日本語の親戚は?」というと今のところ「琉球語」が親戚であることが認定されていますが、それ以外では孤立した言語なので、日本語がわかってもいきなり外国語を話せるということはありません(ただし、同じ中華文化圏に位置する言語:すなわち中国語・朝鮮語・ベトナム語を学習するにはとても有利です)。
さて、今回は「インドの言語事情」をテーマにお話してきましたが、次回最終回の学びBLOGではインドのカースト制についてお話させていただきます。楽しみにしていてください。