第199回 中東、世界に拡がる民衆の抗議デモ(つづき)

2011年2月24日

今回の始まりとなったチュニジアの政変は、同国を代表する花にちなんで、「ジャスミン革命」と名づけられました。
思い出されるのは、平成元年にあたる1989年、東ヨーロッパ諸国で一斉に広がった民主化運動です。ポーランドに始まりルーマニアまで約半年で連続して 政変がおきましたが、この動きは当時、「ビロード革命」と呼ばれました。ベルリンの壁が崩壊し、マルタ島での米ソ首脳会談で「冷戦終結」が宣言されまし た。誰も予想できないほど劇的で激しい、民衆パワーの炸裂であったと思われます。

今回の抗議デモの拡がりは、もっとグローバル化する気配すらあります。特に注目されているのは中国の情勢です。反体制デモの呼びかけが広がると、北京や 上海など全国の大都市では、これを事前に防止しようと大規模な治安部隊が行動しています。次々と市民が連行され、ネット管理は更に強化されそうです。

チュニジアやエジプトの民衆の蜂起には、インターネットが大きな役割を果たしました。特に「フェースブック」は、5億人以上が利用する世界最大の交流サイトですが、デモ参加者の輪を拡げる媒体となりました。
米国で7年前に創始されたこの「FB」は、利用者が日記を書いたり友人とのネットワークをつくる機能の軸に、「実名主義」を置いているそうです。多数の アメリカ人が「アドレス帳を開く代わりにFBで友人とコンタクトをとる」ほど馴染んだツールになってきたとのこと。発端となったチュニジアでも、インター ネット接続や完全デジタル化の携帯電話ネットワークなどが普及していて、そこから発信する人びとの提起が支持を拡げたようです。

「実名で顔を出して動画で呼びかける勇気」が共感を拡げ、大手のサイトにも掲載され、FBやツイッターで伝播して支援の輪も広がったそうです。アラビア 語から英語へ、そして日本語など世界の諸言語で伝えられ、情報やメッセージが加えられていく速度は圧倒的だったようです。
情報のグローバル化は、予想以上のスピードです。様々なテーマで「横のクチコミ」が発達してきました。地域や会社のつながりが弱まる一方で、実名のつながりで遠方の人とも交信できるネット社会の、これからの変容に注目しなければなりません。