第136回 土俵にかける白鵬のたたかい

2010年11月17日

街や公園で、紅葉の美しさに目をひかれます。
最近、あこがれの大きな公園へ電車を乗り継いで行って来ました。黄色に染まったイチョウの並木道を通り、庭園などのモミジは赤く輝いていました。こんな に紅葉が美しいと感動することはなかった気がします。ケヤキ、ハナミズキ、イイギリ、イタヤカエデ、キンモクセイ、メタセコイアなど、数え切れないほど多 くの種類の樹木にあふれた公園でした。とっておきの写真で紹介したいと思います。

今日はスポーツの話題をあげます。大相撲の九州場所で、横綱の白鵬が稀勢の里に敗れて今回の連勝記録は63までとなりました。双葉山の記録まであと6勝 の地点で途絶える悔しさはさぞ深かったことでしょう。でも悪びれずに「心身のスキが敗因だった」と振り返り、「きょう一日ゆっくり考える、まだ13日ある から」と語る白鵬の静かで謙虚な姿から、今後へ向けてまた前へ進んでいく力強さを感じました。

白鵬についてまず驚くことは、まだ彼が25歳(!)であることです。土俵に立つこの大横綱の風格は誰もが感じる魅力でしょう。彼はモンゴル人ですが、熱 烈な日本人のファンは多いのです。日本的な所作やモラルを身につけ、発言にも好感が持たれます。引退した朝青龍とは対照的といえるかもしれません。
それに日本語がすごく上手なことには驚きます。白鵬に限らず、総じて寡黙な感じを持たれる外国人力士は、日本語が堪能な人達が多くて本当に驚きます。

暴力や金銭に絡む事件が続いた日本の大相撲界は、いま「出直し」の最中にあります。一方、幕内の中心力士達の「多国籍化」には驚くばかりです。モンゴル を筆頭にロシア、ブルガリア、エストニア、グルジアなど中東欧諸国や韓国、中国出身の力士が活躍しています。日本の大相撲界で自分の道を拓こうと、慣れな い社会の伝統、因習や人間関係に苦労し、耐えて頑張ったことでしょう。この世界で生きるために、日本語も一生懸命覚えて使いこなせるようになったのだと思 われます。

白鵬は、十年前に6名のモンゴル人と来日しました。小柄な白鵬を受け入れる部屋は最後までなくて、まだ日本語が分からず英語で「帰りたくない」と泣いた 彼は、帰国予定の前日の交渉でようやく宮城野部屋に引き取られたそうです。大きな手足や腰、柔らかい筋肉に素質を見抜く人もいましたが、ひたすら食べ、稽 古を重ねて、次第に頭角を現したのです。横綱昇進が有力された時に推挙が一度見送られ、その後怪我で手術をし、全休する危機も経てついに横綱となった経緯 もあります。そして安定感抜群、無類の強さを認められる力士となりました。モンゴル相撲界の英雄で同国初の五輪メダリストの父親は、「とりあえず今場所は 優勝を目指し、改めて連勝記録達成をねらって欲しい」と語っていたそうです。
白鵬は、「よく寝る」ことも有名だそうです。夜によっては10時間以上睡眠をとって体調維持に努めるそうです。常に冷静さと平常心を保ってわが道を歩む、白鵬関の強い意志と地道な努力の姿に学びたいなと思います。