第784回 創立80周年・建学の精神に照らして

2013年11月20日

創立80周年の記念諸行事を実施して、湘南学園は次の時代へ入りました。

 

これから先20年、「創立100周年」を期して長期的な視野をもち、全学の一層の連携強化と教育の発展をめざして取り組んでいくことが期待されています。

この間改めて考えたことは、湘南学園の独自性であり、関係者の総力で取り組む学園のパワーと活気です。そして建学の精神の素晴らしさです。
在校生の皆が学園の良さと魅力に誇りを持ち、様々な学びや体験交流にチャレンジして人間力を高めてほしい。卒業後は元気でそれぞれの人生を切り拓きながら、母校のためにお力添えを続けてほしい。そんな想いを深めるばかりでした。

 

本日は、11月15日の創立80周年・中高記念式典における校長式辞をご紹介いたします。

皆さん、おはようございます。
湘南学園は、本日、80周年の創立記念日を迎えました。
今日はまず、中高・小学校・幼稚園で学校別の式典を行います。
大部分の皆さんにはすぐ下校してもらいます。交替でおおぜいの来賓の方々に来園して頂いて、学園全体の記念式典を行います。
一斉下校の途中で、通学路や駅では数多くのお客様ともすれ違うはずです。
「ありがとうございます」と、どうか丁寧にご挨拶をして下さい。

記念式典のオープニングでは、幼稚園の太鼓演奏、小学校のコーラス、そして中高吹奏楽部の演奏が披露されます。その後来賓の皆様に移動して頂き、カフェテリアで記念祝賀会が行われます。皆さんは帰宅したら、お家でぜひ本日配られる80周年の記念誌と記念DVDを楽しんでほしいと思います。

記念誌には、皆さんに協力してもらった全学のグラウンド写真もあります。幼稚園児や小学生の可愛く元気な写真も注目して下さい。中高の写真では、学校行事、総合学習、運動部文化部、国際交流などの写真を載せています。先生方や在校生、卒業生などの文章も多彩で、皆さんにも興味深く読んでもらえるものと期待しています。
DVDには動画が入っています。学園と鵠沼の地域をラジコンで撮り、皆さんに校舎から手を振ってもらった空撮の動画も入っています。幼稚園や小学校の子供達の元気に活動する可愛い場面も観て下さい。中高は体育祭・学園祭・合唱コンクールの動画で、これまで上映した内容を合わせたものですが、卒業生や現在高3の人たちが頑張る姿が本当に素晴らしいので、じっくり観てもらいたいです。

さて、今から80年前の日本と世界はどんな時代だったのか、ある程度わかる人たちは、ここにどのくらいいるでしょうか。
湘南学園が誕生したのは1933年=昭和8年です。その四年前にアメリカから起きた世界恐慌の影響で深刻な不景気となり、失業や倒産が世界各国に広がっていました。ドイツではナチス政権が成立し、すでに満州事変を起こしていた日本は国際連盟を脱退しました。後からふりかえれば、次の第二次世界大戦へと向かっていく時代でした。

そんな時代に学園は誕生しました。この鵠沼の地域の住民の人たちが中心となり、軍国主義の風潮を心配して、わが子のためにと先生方を募集して、小さな学校を創りました。まず小学校と幼稚園から、大戦後に中学と高校が設立されて総合学園となりました。その後長い年月を経て、高校入試をやめて中高一貫教育の体制になってからは、16年が経っています。

湘南学園は、いろいろな私立学校の中で、どんな個性や特色を持っていると思いますか。私はシンプルに表現すると、「みんなの力で創り上げる学校である」という点ではないか、と思っています。
学園は特定の経営者や資産家といったオーナーがトップにいる私学ではありません。キリスト教や仏教など特定の宗教を基盤にした私学でもありません。
学校の経営は、教職員と在校生保護者が協議して進められててきました。
ただ在校生の成長と幸福を願うという気持ちを基盤に、先生方と親御さんが力を出し合って創ってきた学校です。

特に今回は、創立80周年を節目に、PTA、同窓会、後援会など「チーム湘南学園」の全面的なご協力を頂いてきました。在校生や卒業生のお母様・お父様、卒業生の方々が、大変な準備を重ねてこられました。

明日と明後日、記念音楽祭を筆頭に、同窓会作品展、フリーバザール、グルメブース、ホームカミングデイなど多彩なイベントが催されます。クラシックもポピュラーも、学園の小学生や中高生がおおぜい出演します。チャリティーコンサートには、吹奏楽部・合唱部・新軽音楽部・ダンス部の皆さんや、先生と生徒の有志も出演します。多数の方々の献身的なボランティア活動に支えられて、これらのイベントは実現します。
もうすぐ開業されるカフェテリアにも、他の私学にない夢が託されています。在校生の皆さんの健康と成長を考えて、出来るだけ安心で安全な食材を使って、お家で作るような手づくりの美味しいメニューで迎えたい。
独自のNPO法人を起ち上げ、他の食堂の訪問や研究にも長い時間をかけ、まず中高生の皆さんのために準備を重ねてきて頂いたのです。

また湘南学園は、在校生の皆さんが主役になって力を出せる場面が、とても多い学校です。学校行事は、新入生歓迎会、体育祭、学園祭、合唱コンクールなど、実行委員会が主体になって自分達で企画を組み、運営し、振り返って次の世代に継承してきました。クラス委員会や各種委員会も活発です。
また各学年では、先生方と協議して一定の条件のもとに「学校の日」のイベントを組むこともできます。

高2と中3で行う研修旅行を思い出してみて下さい。旅行委員会の人たちの役割が重要です。学年全体の民泊を積極的に導入したり、高2では全国各地にコースを分け、バス1台で移動できるオリジナルの手作りコースを組めることも、深い体験や感動を実現しています。
学園はこの約10年、国際交流のプログラムも充実させてきました。現地でどんなプレゼンが出来るか、来日した外国の人達をどう歓迎しどんな交流ができるか、そうした場面でも皆さんの自主性が存分に発揮されています。

このように、湘南学園はみんなの力で創り上げる、私立の共学校です。
それは、学園の教育目標とも深く関わっています。
学園の建学の精神は、第4代学園長の大久保満彦先生が表現され、継承されてきました。「個性豊かに、身体健全、気品高く、社会の進歩に貢献できる、明朗で実力ある人間の育成」という目標です。

いま日本と国際社会は、たくさんの困難な問題を抱えています。その時代の中で、皆さんは、中高6年間の学園のステージで、地道に学習に取り組み、豊かな体験や交流を重ねていきます。
そして意欲と希望をいっぱい持って大学などに進学し、社会人へと歩み出てもらいたいです。それぞれが確固とした幸福を築くことが願いです。自分の個性や良さを自覚し、それを生かせる場所をつかんで元気に生きていってほしいと願います。

建学の精神に「明朗で実力ある人間」という言葉があります。そのためにはこの先、社会に生きる人びとにいろいろ出会っていくことも重要です。
この世の中は精いっぱい仕事をしている様々な人たちによって支えられています。素晴らしい人生、かけがえのない仕事、大切なつながりが世の中にはたくさんあることを知ることが大切です。
また中高の時代に、クラブ活動や学校行事に思い切り燃えて、クラスや学年、先輩後輩の縦のつながりで目標を持ち、一緒に取り組む経験をいっぱい持つことは、大きな財産になります。大学生や社会人になってから役立ち、励みになる経験です。この先いずれ独りになって新たな場所へ行っても何とかやっていける、大丈夫だという「楽天的な自信」を育んでもらいたいです。
「明朗で実力をつけた人間」はどこへ進んでも恐れることはありません。

建学の精神には「社会の進歩に貢献する」という言葉もあります。湘南学園はこの部分も大切にする学校です。人類は、この後の我々の子孫まで果たして現在の生活を続けて残していけるのか、という不安を抱えています。深刻な地球環境、貧困、民族や軍事の対立、食やエネルギーの危機、孤独の進行など解決を図るべき問題があります。

国連やユネスコは「持続可能な社会を担う若者を育てよう」という呼びかけを強めています。わが学園はこの呼びかけに真正面から応えられる私学でありたいと考えます。中1から高3まで進めている総合学習もこの一環です。社会に生きる人びとに直接に出会って学ぶ深い意味にも関わることです。

改めて皆さんに伝えたいことは、たった一度の人生の中で、皆さんそれぞれ自分だけの「使命」がきっとあることです。自分にしか果たせない役割を見つけ、ずっと続けていきたい取り組みにきっと巡り会ってほしいと思います。また出会えるように、アンテナを張って頂きたいです。
これから30代を迎えるまでの時代に、人生の重要な出会いの半分以上がやって来るといわれています。これだと思えるライフワークに気づかせてくれる人に出会ったり、生涯の伴侶として真剣に考える人に出会ったり、様々でしょう。坂道を辛抱して登りながら、時には強く踏み出しましょう。

何の変化もない生活が長く続くようで、人生には大きな転機や決断を迫られる時がいくつもあります。その時に学園の教育目標を思いおこしてみて下さい。~「社会の進歩に貢献する、明朗で実力ある人間になる」~
これは普遍的な金言です。自分はもう50代で中年後期の世代ですが、この指標を心に刻むようになりました。この言葉に照らしてみて、自分の境涯がまだ低いことを自覚しています。

最後に皆さんにもう一度伝えます。あなたならではの人生の目標をつかみ、いずれ自分の使命や役割を自覚する人生を築いていただきたいです。
湘南学園は、これから「創立100周年」という大きな目標を持たねばなりません。20年後にも元気で皆さんが再会してそれぞれの人生を語り合ってほしいと思います。その時もぜひ、80周年記念館を利用して下さい。
それでは以上で私の式辞とします。ご静聴ありがとうございました。