第839回 葛西選手の笑顔と涙に感動!

2014年2月19日

ソチ冬季五輪の様子をテレビで観るのを楽しみにしています。日本選手の活躍ぶりに、ここまでも感動する場面がいろいろとありました。
特にスキージャンプの葛西紀明選手の大活躍と歓喜の姿は、とびきり深い感銘を与えてくれました。男子の個人ラージヒルの銀メダル、団体の銅メダルを取得した葛西選手は、実に41歳にして現役、世界最高峰の選手のひとりです。今回の日本選手団の主将を務め、世界ジャンプ界では“レジェンド”と称えられ慕われていることを知りました。

 

葛西紀明選手は、1992年アルベールビルから7回連続で冬季五輪に出場してきました。1998年長野ではその前の骨折・怪我から団体メンバーを外され、その後も苦しい時期を何度も経ながら現役を続行し、今回の快挙に至ったのです。贈呈式でぴょんと台に跳び乗り、両腕をつきだしてはしゃぐ姿は限りなく爽やかでした。四年後の平昌五輪はと問われて「もちろん」と即答し、「体力や技術はもっと向上できます。金メダルを目標に続けます」と笑顔で語る姿に圧倒されました。
団体表彰では対照的に泣いていました。「嬉しいです。みんな頑張ったから。何より団体で後輩達にメダルを取らせてあげたかった」と、怪我や病気を抱えた後輩達を気遣い、皆の団結で勝ち取ったと泣きはらす姿は後輩思いの優しさにあふれていました。個人で祝福にすぐかけつけた後輩達にとって先輩は気さくな兄貴分であり、仰ぎ見て目指してもまだ届かない“神様”でもあるのです。

 

40歳を越えて世界のトップであり続ける背景には、自分に生かせることは何でも導入し、たゆまぬ努力を惜しまなかった姿勢があります。小学3年から競技を始め、「誰よりも早く来て最後まで練習していた」少年は「うまい先輩が跳ぶ姿をじっと見つめ動きを学ぶ姿」が印象的だったそうです。国際大会の常連になってからも、単に勝った負けたでなく「一流選手の技術をしっかり見て、帰国するたびにレベルアップする」ほど探究心が旺盛でした。
バスケットボールの練習を黙々と観察したり、サッカーのリフティングや体幹鍛錬のトレーニングなど役立つことは何でもやってみたそうです。最近では全く独自のトレーニングを続けて「モモンガフォーム」を身につけ、滞空時間を更に延ばしました。全てがうまく絡み合い「つかんだ!」の手応えが語られる中で、この五輪を迎えられたそうです。

 

葛西選手は長野大会の直前に母親を火災でなくし、その前に難病となって今も闘病する妹さんを勇気づけることが、現役続行の大きな支えとなっていました。お姉様の心強い激励もずっと届けられていました。いつも自分を支えてくれた母親や支え合ってきた姉妹など家族に、やっと恩返しできたとの想いを語っていました。
いまや各大会では、葛西選手が登場するといつも観客から特別の大きな拍手が送られるそうです。40歳代にして世界の頂点を守る姿は“驚異”とされ、広く尊敬を集めています。何よりも葛西選手の人柄が素晴らしいです。温もりあふれる笑顔や表情、ふるまい全てにオーラが感じられます。前向きで思いやりあふれる人間性、年齢を重ねながら更に魅力的になっていく姿に、人びとは勇気づけられ、自分も頑張らなくてはとの思いになったことでしょう。

在校生諸君もこうした感動をわが身にひきつけ、これからの自分の目標を強く掲げて、続けて努力していってほしいなと思われました。