第935回 TVドラマ『若者たち2014』について
高校1年のフロアに、七夕の季節にちなんで、生徒達の願いを記した短冊が寄せられていました。思い思いに加われる設定が素適です。友達の願いに共感したり笑ったりして、心の交流が広がるといいなと思います。
おやっと驚く、懐かしい名前のドラマが始まりました。『若者たち2014』という番組です。フジテレビの開局55周年記念ドラマで一昨日から始まり、これから毎週水曜日に放映されるそうです。第1回からなかなか面白くて惹きつけられました。若い世代にまたご家族で観て頂けたらと思い、紹介いたします。
両親を亡くした5人きょうだいとその周辺の若者達が主役です。仕事や恋愛や人生に悩みながら、それぞれの夢にこだわってたくましく生活する姿を描き、青年が熱く議論するシーンが大切にされる硬派の群像ドラマです。
同名の『若者たち』は、かつて一世を風靡しました。1966年の連続TVドラマに続いて映画でも有名になり、田中邦衛らの名演は当時の若者や大人に幅広い感動と共感をもたらしました。同名の主題歌も有名です。“君の行く道は/はてしなく遠い・・・・・・”というあの歌です。
今回の2014版は、あくまで現代の社会を舞台にリメイクされています。『北の国から』で知られる杉田成道氏が演出の舵をとり、こう語っていました。
・・・・・・あれから50年近くが経ち、日本には見えない“明日への不安”が蔓延している。しかし懸命に生きる人びとの姿は変わっていないし、人の絆の大切さはむしろ再認識されているのではないか。人生はバトンリレーでもあり、僕らは先輩達から受け継いだバトンを次世代に渡す使命を持っている。その視点を大切にして新たな「若者たち」を考えていきたい・・・・・・と。
主人公のきょうだい達は世の中の現実や理想についていつも議論し、毎日のように激しく言い合い、時には大喧嘩もします。建前と本音の矛盾を批判しつつも、お互いの幸せを願って時には助け合います。やや過激なシーンもありましたが、それぞれの恋人や交際相手との関係も含めて様々な人生模様が描かれます。学歴、就職、リストラ、格差などいろいろな問題に悩み、恋愛、結婚、生命、幸福といった切実なテーマに向き合う青春群像に共感します。
豪華な配役陣も注目ですが、初回では特に長男役の妻夫木聡と相手役の蒼井優の熱演、ラストの心揺さぶられる美しいシーンが印象的でした。主題歌を今度は森山直太朗が歌い、要所要所であの歌がリフレインされるのもドラマの抒情を深めます。
レトロ昭和感覚の老朽化した一軒家や真面目な議論の様子が、東京スカイツリーや携帯電話に象徴される現代の風景に少し似合わない印象も始めはありますが、次第にいまの風俗にドラマの展開が溶け込んでいきます。どこまで時代性を織り込んで新たな『若者たち2014』を創り上げていけるのか注目しています。
高校生や中学生の皆さんは、どこまでリアリティを感じられるかたずねてみたいです。少し年上の先輩世代がそれぞれの幸福を求めて懸命に生きる姿から何か感じ取ってもらえれば嬉しいなと思います。