第1120回 軽井沢・ISAKを視察訪問して ②

2015年6月10日

昨日からのつづきです。私達が参加したのは、「ISAK教員ワークショップ」という参加型のプログラムです。約70名の参加者は小・中高・大の教員から企業・役所・研究所まで幅広くまたがっていました。発言や役割分担でも驚くほど積極的で始めは戸惑いましたが、問題意識や英語力が著しく高い方々ばかりで、一泊を経た親睦交流で面識を広げ、大いに啓発されたことも収穫でした。

土曜日の第1ラウンドは、「クリエイティブ・ラーニング」を学ぶワークショップでした。同志社大学の教授によるレクチャーと活動を通じて、“一定の課題意識のもとで問いを立て、仲間との対話・協働で探って学んでいく”課題が追求されました。参加者がグループでブロックを高く積み上げたり、2列に向かい合って順送りで似顔絵を描くゲームにも取り組みました。「学習環境デザイン」の大切さ、「夢中になる学び」、「憧れによって鍛えられる可能性」などについて、担当の個性的な教授から、大学生と進める新たな学びのご紹介とともに教示されました。

 

第2ラウンドはISAKへ移動してランチ後に模擬授業の見学から始まりました。理科や音楽の授業も気になりましたが、歴史の授業を選択しました。

担当は歴史教育の国際的なスペシャリストの女性でもちろんオール英語、受講者は18名でした。テーマは「歴史の教科書はなぜこんなにも議論になるのか。宣伝や偏見を乗り越える歴史教育をどう進めるべきか。歴史の正当性は誰によってどう担保されるのか」といった高度な内容です。

尖閣諸島や従軍慰安婦が題材になり、生徒は各自異なる役割を演じる設定で意見を述べ、質疑応答で議論を進めるスタイルでした。保守派・革新派・役所等の立場があり、歴史教員・留学生・放送局・日中韓・学者の役回りまでありました。

わが英語力では内容の詳細はつかめませんが、一番驚いたのは高校生全員が実に流暢に堂々と英語でスピーチし、議論する姿でした。事前に資料を渡され、自分でも調べて本番に臨みます。授業開始の直前まで携行パソコンで入念にチェックする姿がありました。意見や立場の多様性を体感し、意見を表明しながら接点を探るトレーニングをこうして日々重ねているのかと感心するばかりでした。日本人のISAK生も英語はもうバリバリであり、この難しい議題で日中韓の若者達が真摯に語り合える様子にも惹きつけられました。

参観後の感想交流では、相手を論破するディベートになっていないとの指摘もありましたが、世界に広がる対立の先鋭化が一向に解決しない中で、欧米型追随でない、アジアの良さを生かした協調型のリーダーになりたいとの自覚が生徒も芽生えていると聞いて驚きました。将来はきっと祖国の大統領になれる!と思えるほど雄弁な女子学生のスピーチの様子などを今も鮮やかに思い起こします。

 

ISAKの生徒や教職員との交流会が続きました。アジア各地や日本出身の在校生諸君ともいろいろ話せ、入学の動機や深まる友情、クラブの新設ラッシュがあることなど興味深く聞きました。

キャンパスツアーでは校舎・教室や学生寮、体育館を見学しました。意外なほど質素で節約されている運営や生活を知り、極めて仲の良い第1期生の笑顔と歓声の様子を見て、大自然に包まれた環境から夜空満天の星も想像できました。

夜の懇親会は、激務スケジュールを経た小林りんさんも合流され、参加者の交流が盛り上がりました。スーパーグローバルハイスクールの指定校を始め、先進的な取り組みで有名な学校の方々が大勢いました。

このワークショップはISAKの若い女性スタッフが手づくりでデザインされ、大学院生達がインターンで関わり運営の隅々までサポートしていました。事前に参加者全員に電話インタビューを行い、課題意識をつかんでグループ分けする程の周到な準備をされており、皆さんの優秀な経歴や圧倒的な英語スキルと運営への熱意、温かく謙虚な人柄に惹かれました。(明日へつづく)