第1161回 「反抗期」をどう捉えて対応するか ②

2015年9月12日

昨日からの続きです。反抗期は、子どもから大人へ向かう思春期において、自立へ向けたステップでもあると説明されます。親や教員のいうことに疑問を持ち、素直に従えない気持ちが強まる一方で、様々な悩みやストレスを抱え、やり場のない感情が増幅して反抗に至る。このように理解できないでしょうか。

 

特に中学生は、友達との人間関係、学校の勉強や成績、自分の性や容姿、将来のことなど、つらいことやコンプレックスが増幅しやすいものです。様々な悩みが重なっています。学校では権力と管理の色濃い、理不尽な説教や叱責に対しては、生徒が時には集団で荒々しい反発をする場面がよくおこります。一方で信頼関係が育まれていれば、厳しくも慈愛深い言葉には一転して従順になることもあります。

家庭においては、もっとストレートに反抗が表明されやすいものです。親の愛情を確認するためにわざと乱暴に言って、親の反応をたしかめることも多いことに留意すべきでしょう。何だかんだいっても、親を信じているから、安心してブーたれたり、悪態をついたりするのです。背後にある悩みを察しながらわが子の気持ちをまず受けとめ、親からのメッセージをどこでどう届けるか、熟慮することが大切でしょう。

感情のコントロールがまだ下手で、まとまった言葉で自分の気持ちや願いを伝えきれない苛立ち。親も教員も思春期特有の屈折をつかみ、子どもが判ってもらうべく言葉を選び、辛抱強待ちながら、関わり続けることです。「相手がわかってくれない」悩みの中で、子どもや生徒は試行錯誤しながら成長していきます。どこかで嵐も収まり、穏やかな様子やグッと成長した姿にちゃんと出会えるものです。

 

脳科学者の中野信子先生が、専門的な立場から反抗期の捉え方を説明していました(9月7日朝日新聞)。脳の中で「共感性や意思決定、社会的な行動を司る機能」は成熟が遅く、思春期から25歳くらいまでにつくられるそうです。これらの発達を促すには、しっかり食べて寝ること、そして健全な刺激を与えることと論じていました。共感や同情、社会性は一人では身につかず、コミュニケーションの相手が多い方が望ましいと指摘されます。誰かと遊んでくつろぐことも大事な所以です。

親御さんには、反抗期は脳の発達段階のサインだと思って接してあげてほしいと助言していました。あれもこれもダメと縛らず、様々な価値観に触れることが脳の発達を促すことを理解してほしいとの説明です。
家庭内における価値観と、学校を含む広い社会の価値観が違うことに気づき、反抗期はその葛藤の現れでもあると論じていました。子どもに任せることで脳の健全な発達を促す視点を提示しました。

そのような科学の知見もふまえて、親も教員も共々に、慈愛ある適切な関わりに努めていきたいものです。