第1172回 ネット通販の普及について ③
昨日からのつづきで今回でまとめます。前述した特集記事では、途上国への様々な援助の活動でも、物流網の整備が重要となっている状況が紹介されていました。
災害地や紛争地に食糧や毛布・テントなどの救援物資を運ぶ国連世界食糧計画(WFP)には約2500人の「物流のプロ」がいて、その仕事ぶりが紹介されていました。日本の民間団体が、アジアのある最貧国で、村の世帯の4割に普及したスマホに目をつけ、巡回するトラックがSNSで日時を伝え、売りたい農産物の連絡を受ける形で物流網を整備し始めた事例が取り上げられていました。
グローバル時代の新たな物流の展開について、新聞記事を中心に掲載させてもらいました。
ここで留意したいことは、便利な生活を支え、新たな需要に応えるために、多数の人びとが大変な仕事に従事していることです。巨大な倉庫や空港や路上などで、時間に追われながら正確に業務を行う人達のおかげで便利な生活が支えられています。そこでは非正規の不安定な雇用におかれている人びともいます。早朝や深夜にまたがる仕事で心身の健康を崩す方々も少なくないことでしょう。
最近特に注目されるのは、トラック運転手の不足の問題です。長時間運転と時間指定のストレス、扱う荷物の複雑化、重い荷物の積み下ろしとお届けの負担、熾烈な業者間競争など、お仕事の厳しさが想像されます。
そしてネット通販の普及は、伝統的な商店街や何でも揃う巨大店舗の営業にもじわじわと大きな影響を与えつつあります。家電量販や総合スーパーの大手が公表した店舗の全国的な縮小計画にも一定の反映があることがらでしょう。
初めに紹介した記事では、国内に店舗網を広げるコンビニ業界が、通販にはない接客を前面に出して対抗する様子を紹介していました。たとえばコンビニ大手の関連会社では、高齢者の安否確認を兼ねて、自宅に弁当や紙おむつを届けるサービスを始めているそうです。途中でクリーニング店に立ち寄るなど買い物代行の需要にも応えるなど、品揃えで有利なネット通販に対して、接客重視・「心の通い合う商売」で対抗しています。
顧客一人ひとりの情報をいかに持てるかで、店舗も通販もアイデアを競っている時代ともいえます。
在校生や卒業生の皆さんには、このようなグローバル経済の進展に伴う、人びとの暮らしの変化はもちろん、社会の生産、流通と消費を支える様々な仕事の状況や変容ぶりにも十分に目を向けてほしいと思います。世の中の動きにアンテナを張ることです。自分の希望する進路、進みたい仕事の分野について、広い視野から熟慮して選択してほしいと願っています。