第1187回 “絵本の里”の試み~地域おこしの力に学ぶ ①
今日は、最近特に心に残ったTV番組から学んだことを取り上げます。
NHK総合の『小さな旅』という番組です。日曜日の朝8時から放映される、長寿の紀行番組です。ほぼ毎週に録画も入れて観ています。この前の18日は「ようこそ絵本の里へ~北海道剣淵町~」がテーマでした。道北に位置する町で、旭川市からも鉄道で約1時間、冬の寒さが厳しい地域でしょう。
明治時代から開拓された農業の町で、人口は約3300人。広大な田畑が広がる美しい光景は圧巻でした。9~10月はじゃがいも、小豆、南瓜、米など農家は収穫作業に大忙しです。
町には至る所に「絵本の里けんぶち」のキーフレーズが、看板や旗やマンホール等に掲げられています。町の中心には、絵本専門の図書館「絵本の館」があります。世界中から集められた約45000冊の絵本が所狭しと並び、館内は絵本に親しむ児童や生徒でいつもあふれています。親子で読み聞かせを楽しめるスペースも特設されています。また、子供達に絵本を届ける「キャラバンカー」が保育所や小学校、イベント会場など町中を巡回しています。
ボランティアの人達による絵本の読み聞かせに、どこでも子供達は目を輝かせています。そのスタッフは農家の方々が多く、“芽ぶっく”という素適な名前のグループでは絵本の研究や発掘に余念がありません。自宅でもお子様やお孫さんに絵本をふだんから読んであげているのです。
“絵本の里”の起ち上げは、約30年前、若者達が絵本を題材に町づくりをしようと動き出したのがきっかけでした。いわば無名の農業の町から次々と若者達が流出して、都会でも「故郷の名前を名乗りにくい」らしいとの情報に接して、故郷に誇りを取り戻したい、“子供達が誇れる町になろう”と決意したのが始まりました。
何か個性ある町のシンボルを設けて活性化を図りたいと、農業や商店で故郷に残った跡取り達が話し合いを始めました。空と大地がどこまでも続く田畑の光景が絵のように美しいと、都会から来た絵本作家がつぶやいたのがきっかけになったそうです。(明日へつづく)
※ 写真は、中高図書室の最近の様子から撮ったものです。なおご紹介した番組は、今週24日(土)の朝5時15分から再放送されます。