第1198回 中国「一人っ子政策」廃止の報道に接して ①
中国政府が「一人っ子政策」を廃止した、とのニュースが広く関心を集めています。今日はそのテーマを取り上げてみます。
1979年以来続いてきたこの政策は、日本の地理の教科書に載るほど有名なことでした。人口13億人を越える大国・中国が推進する国策として広く知られたことでした。
「出産」という人間の本来自由な選択、営みを基本とする事柄に、政府が社会のためにと産児制限を国の隅々まで徹底させようとしたのです。「家族計画」に対して教育や啓蒙を行うという通常のレベルにとどまらず、国土の中央から地方まで細かく規定が設けられ、大がかりな行政指導により全国で計画出産が管理されました。
今度の転換の背景には、中国でも少子高齢化が急速に進んで、労働力人口の減少がクローズアップされた情勢がまずあります。減速する経済成長への危機感が重なりました。また過保護な子供達をめぐる様々な傾向も危惧されました。
実は一昨年には「両親いずれかが一人っ子なら2人目を認める」という緩和策が採用されました。しかし中国の大都市では日本と同様に少子化が定着した中で出生数はあまり増えなかったそうです。
今回は「例外なく2人目を認める」とされました。厳密にいえば産児制限の制度は残るので全面撤廃すべきとの声もあります。特にこれまで国策に従わない家族への罰則規定が設けられ、妊娠中絶や戸籍登録など人権侵害を伴う状況が広がっていたとの批判もあったからです。
日本の10倍以上もの総人口を持つ、中国という大国の運営がいかに大変で困難なことかは、ある程度は想像がつくことでしょう。
1949年の建国以来、中華人民共和国の国づくりの歩みは苦難の連続でした。でも現在では、アメリカに次ぐ経済大国として、政治や経済、外交や軍事などで中国の存在感は圧倒的に大きくなりました。
一方で都市部と農村部の関係、国民内部の貧富差、社会保障、環境問題や少数民族問題など難しい課題がいろいろ重なっています。日本がかつて通ってきた問題にもっと大規模な形で直面している側面も指摘されます。隣接する両国の協力関係が切実に求められているといえるでしょう。
実は、中国でも日本でも共通する少子化をめぐる切実な現状があることに気づきます。
「2人目はなかなか産めない」といった悩み、「自分達は子どもを持てるのか」、「自分はそもそも結婚できるのか」という悩みが、次世代の若者達に広範に広がっていることではないでしょうか。(明日へつづく)