第1199回 中国「一人っ子政策」廃止の報道に接して ②
昨日からのつづきです。中国の一人っ子政策に関心が強いのは、自分がひとりっ子として育った生い立ちも絡むことと思われます。兄が幼少時に亡くなってから、自分はこの世に生を受けました。戸籍上は次男であり、両親は細心の注意と切ない思いで自分を育ててくれたことでしょう。
自分の学校時代にはひとりっ子は少数派でした。“やーい、ひとりっ子!”という冷やかし言葉がまだ一般的に通用した時代です。独り遊びにも慣れて、独りで夢想する時間も長かった少年期を振り返ります。
教員になってすっかり時代は変わりました。いまやひとりっ子は多数派です。
生徒達と話していて、“まさかきみが&あなたがひとりっ子とは!”と驚く事例も多くなりました。ステレオタイプを戒めますが、ひとりっ子も多様化したなと思うことがあります。
社会全体で婚姻と出産を基本に単純に述べれば、一組の夫婦が2人の子どもを育てて人口はやっと維持されることになります。しかし成熟した先進国や経済発展著しい途上国では、夫婦が複数の子どもを持つことが困難になる状況が広がってきました。そこには、様々な必需品や教育費の負担、共働きを支える保育所や長期休暇の保証などが社会全体で遅れている背景があります。
そして更に心配なのは、“子どもを持つこと”や“結婚すること”自体に対してあこがれ感よりも負担感を持つ若い世代が多くなりつつあると指摘されることです。“恋愛自体がめんどうくさい”と表明する若者も少なくないようです。努力しても報われないかもしれない不安感、お金があれば独りで生活できる快適さとその時間優先の傾向などが指摘されています。
人生観や恋愛観はもちろん、人それぞれ様々です。それでもいま社会の底流で進行する次世代の感覚はやはり気になります。引き受ける重さ、共に生きる重みも受けてこそ人生により深い充実感がもたらされることを、説教になりそうでもきちんと伝えたい思いがあります。“結婚はいいよ”そして“結婚はできるよ”というメッセージ。多少の辛抱と勇気があれば道は拓けるし、“ふれあい”“ときめき”“やすらぎ”あっての人生だよと折にふれて伝えたいのです。
中国の一人っ子政策から話がやや拡散しましたが、在校生や卒業生も皆さん通る人生のテーマです。自分の家庭を築くことに温もりあふれる夢を持ってもらいたいです。共学校の教員として、時代の変化を踏まえたメッセージを送り続けたいと思います。