第428回 高校・中学の始業式~新年度がスタート!

2012年4月7日

今年度、ひきつづき湘南学園中学高校の校長を務めます、山田明彦です。
この「校長通信」では、湘南学園キャンパスの内外をめぐる様々な動きや取り組みについて、「登校日は毎日」を原則にご紹介に努めてまいります。
校外の方々にも校内の方々にも、幅広くお読みいただけたらと願っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

寒さの厳しかったこの冬もようやく去って、春本番を感じさせる時期となりました。毎日桜の開花が進行しています。校舎の前に並ぶまだ小さな桜も出番を迎えてはりきっています。明日はどこへ花見に行こうかと思案しています。

生徒諸君は、高校と中学それぞれで、アリーナで新しいクラスを確認し、始業式に臨みました。その後学年ごとに机や椅子の移動や掃除を行い、新しいクラスで出会いのHRを行いました。
新しいクラスに入る期待と不安は、毎年恒例とはいえ、生徒諸君にとって大きなものがあるはずです。前からの友達と楽しく話せる一方で、隣の人や近くの人、少し淋しそうな人などに気持ちを前にして挨拶し、声をかけてみてほしいと思います。出会いと縁を大切に、心を開き合えるクラスを皆でつくっていってほしいものです。
それでは最後に、それぞれの式における校長からの挨拶を紹介させていただきます。

【高校始業式】
皆さん、おはようございます。今日から新しい年度が始まります。今年度も在校生の皆さんとのいろんな接点を大切にして精いっぱい取り組んでいきます。どうかよろしくお願いいたします。
始業式にあたり、皆さんにある1つの事について問題提起をしたいと思います。これからの学校生活、受験勉強、そしてその先の大学や仕事の世界でずっと必要になると思われる、大事な力についてです。それは「続ける力」です。大リーグマリナーズのイチロー選手は、こんなことを語っています。
「夢をつかむことは一気にはできません。小さなことを積み重ねることで、いつの日にか信じられない力を出せるようになっています」「今まで自分がやってきたことをしっかり継続することが、イチローという選手の能力を引き出すためには外せないことです」「過去の積み重ねがどれだけ大事なものかを感じています。それがなければ今の技術や精神は作られなかったのですから」

これらの言葉は、最近読んだある本の冒頭に紹介されていました。その著者は弁護士の伊藤真という方です。日本で一番難しいとされる司法試験がご専門です。司法試験は弁護士・裁判官・検察官になるための国家試験であり、先生は東大法学部を卒業後、司法試験を合格し、今は「伊藤塾」を開いて受験指導のカリスマ専門家として有名です。日本国憲法の素晴らしさを広める講演などの仕事も精力的に進めておられます。
先生は、司法試験に合格するのに最も必要な能力は「頭の良さ」ではない、「続ける力」であると提起しています。法律の勉強は語学の学習に似ていて、マスターするには何よりも「慣れ」が必要である。かなりの時間はかかるが地道にコツコツと勉強を続けるしかない。二年で受かる人もいれば10年以上かけて受かる人もいる。あきらめないで「続ける力」を発揮できる人のみが、合格の切符を手に入れることができると強調しています。センスやひらめき、回転の速さといった能力に恵まれなくても、「続ける力」は誰にでも平等に与えられている。ただ「続ける力」を最大限に発揮するためには続けるための「技術」が必要だと、先生は指摘します。

よく「継続は力なり」ともいいいますが、続けることは難しいものです。「わかっちゃいるけど、続けられなくてやめてしまう」というのが多くの現実でしょう。我々大人も同じで、語学、楽器、ダイエット、禁煙など、誰でも「三日坊主」の体験があるものです。なかなか続けられないのは、必ず「退屈で単純なプロセス」が存在するからで、それを長続きさせるコツについて先生は様々なヒントを説いています。
続かないのは「時間がとれない」からではない。たとえばダイエットのためにマシンを買って腹筋運動を毎日10分やるのは、歯磨きや入浴のように「生活の原則」にはなかなか出来ないものです。生活のパターンは、人それぞれある程度決まっています。自分にとって「例外的な特別なこと」としてやっていると、どうしても精神的にきつくなってしまうのです。一日のスケジュールをリズムを少し変えて、新しいことを仲間に迎え入れる気持ちでやるようにすると、定着しやすくなると説かれています。
そのために先生が指摘するポイントを、いくつか紹介しましょう。まず「ゴールからの発想」という考え方です。山登りやマラソンも頂上やゴールが何キロ先にあるかわかると最後まで頑張りきれるものです。自分の目指すところが具体的にイメージできれば、限界を感じて挫けそうになった時、目の前の壁を突き破るエネルギーが沸いてくるものです。先生は受験生にまず「毎日3時間の勉強を二年間続ければ、司法試験の合格に必要な知識は必ず身につきます」と、明確な展望を示すそうです。
この春、東大に現役で合格した二人の先輩も、早い段階から目標となるゴールを明確に意識して地道に取り組んでいました。こだわりの第一志望校が決まれば、まっすぐに最短距離をつかんで取り組む勉強が可能になります。

「全体から部分へ」ということも強調されています。先生はまず、司法試験の合格に必要な勉強の全体像を始めに示すそうです。憲法や民法・刑法など主な法律の特有の体系を最後までざっと見通した上で各条文を詳しく扱うそうです。様々な法律の間にある関係性も早めに学ぶことで、その他の法律の学習もはかどるそうです。
高校生の皆さんの勉強でいうなら、教科書や参考書やテキストの全体像をまずつかむことです。厚い参考書ならば、例えばその目次をコピーして、自分の勉強の進行状況を常に意識すると、その一冊を完璧にマスターしやすくなる、と先生は助言しています。あれもこれもといろいろな本に手を出して、どれも中途半端になるのを避けるべきだとも指摘しています。
先輩達が合格体験講演会で話してくれた珠玉のアドバイスの中で、お勧めの参考書を伝えるよりも、定評のある本はそれぞれ根拠があって良い本だから、いわば浮気をしないで、自分が選んだ本にまずしぼって徹底的にマスターし、繰り返すことの方がはるかに大切だよという話がありました。ある本を片手に「ここにある英文100をまず完璧に覚えよう」と決めて実行したら展望が拓けたという話(ドラゴンイングリッシュという本でした)もありました。

また先生は「ゴールの先の一歩先をイメージする」と助言します。伊藤塾では「合格後を考える」というモットーで、司法の現場で活躍する人たちの講演や書籍などをどんどん紹介するそうです。将来のなりたい自分を想像して、合格はそのルートの大事な通過点ととらえるのです。また「ゆっくり急げ」というモットーが紹介されます。ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスが好んだ言葉だそうで、ぐずぐずしてはいけないが慌ててはいけない。未来の大きな夢を描いたら、一日も早く行動を始めるべきです。そして足下だけを見て目の前の一歩一歩に集中することです。
「他人と比べ過ぎない」ことも大事だと強調されていました。努力を続けるとは、常に「自己ベスト」を目指す営みです。「やれば出来る、必ず出来る」と信じて、「自分は自分のペースでやろう」と腹決めして、モチベーションを確実に引き上げていこうとされていました。また「スランプになるのは頑張っている証拠だ」ともありました。スランプに直面したら、自分の状況を客観的に観察する姿勢が大切であり、「自分は何をやってもダメだ」と全否定にならないが大切です。原因は何か頭にあることを紙に書き出してみると、思わぬヒントを発見することもあるそうです。
「部分的な問題を全体の問題のように思いこまない」「短期的な問題をずっと続くかのように永続視しない」ことの大切さを、伊藤先生は強調していました。
ここまでのお話は、『続ける力』という幻冬舎新書に載っている内容からお伝えしました。とてもヒントになり、今後への意欲が湧いてくる良い本です。興味を持った人はぜひ買って読んでみて下さい。

さて皆さんには、改めて初心にかえって、この新しい年度の勉強に全力で取り組んでいただきたいと願っています。
特に高校3年の諸君は、いよいよ大学受験まっしぐらの一年となります。それぞれ今の到達度はいろいろですが、第1志望を妥協することはありません。この春の先輩達の合格実績を見て、あせる気持ちもあることでしょう。でも今日お話した「続ける力」を発揮して、毎日寸暇を惜しんで地道に勉強していきましょう。模擬試験では、すでに受験を経験した浪人生とも同じ土俵で戦います。始めは厳しい判定が続くかもしれませんが、おちこむことはありません。丁寧な復習と対策を積み上げることです。地道に実力を蓄えれば、必ず目に見えて成績はアップしていきます。合格が近づいていきます。皆さんの奮闘を、躍進を私は信じています。

高校2年の皆さん。ここから文系と理系に分かれ、大学受験を意識した勉強にも本格的に着手するべき学年です。皆さんそれぞれ、高い志や目標をすでに持っていますか。難関大学を第1志望にするなら、2年間をかけた地道な勉強の積み上げが必要です。また多くの諸君は、一方では運動部や文化部のリーダーとなることでしょう。技術的にも人間的にも、後輩の手本になるようなリードが求められます。また来月の体育祭を始め、学校行事でも高2がリーダーになる場面が多くなります。特活や研修旅行でも、皆さんの自主的な取り組みが大いに期待されます。いそがしい一年ですし、同じ時期に幾つもの課題に直面することでしょう。でもそこを自分なりに両立させ、優先順位をつけてやりこなしていきましょう。そうした苦労や経験は、将来仕事についてからも必ず役に立つものです。どうか「続ける力」を蓄えながら、達成感を持てるように頑張って下さい。

高1の皆さん。高校時代は、自分のこれからの人生や将来の進路について、その方向を本格的に考え始める時代です。揺れ動く社会の様子にアンテナを張り、自分の個性を見つめ直し、自分にふさわしい進路の分野をゆっくり探していきましょう。
大学についても情報を集めて、足を運ぶようにして欲しいと思います。高校1年は、中高6年間の中で進級のプレッシャーが一番強い年度です。履修科目が多く、苦手な教科の勉強を怠っていると、単位がとれない科目が出て進級が厳しくなる事態にもなりかねません。高校へ進学して一人ひとりの自覚と努力が問われていきます。
中学時代の反省を踏まえて、一歩一歩地道に勉強に取り組みましょう。
皆さん一人ひとりが、この新年度を充実した一年にしていけるように祈っています。
一日一日を大切にして、自覚ある生活を築いていきましょう。
以上で、私からの挨拶を終わります。

 

【中学始業式】


皆さん、おはようございます。今日から新しい年度が始まります。今年度も在校生の皆さんとのいろんな接点を大切にして精いっぱい取り組んでいきます。どうかよろしくお願いいたします。始業式にあたって、皆さんに強く願っていることを二つお伝えします。

いま皆さんは、今日まできっと心配だった、「クラス替え」の発表を確認しました。
去年のクラスや同じクラブの友人に恵まれて「良かったね」と声をかけ合った人もいれば、仲良しと離れて「友達が少ないなあ」と不安な気持ちの人もいることでしょう。6年間を通じて、「クラス替え」は毎年行われます。期待も不安も混じるクラス替えは、実は人間関係を広げていく大切な機会でもあります。湘南学園の高校卒業までみんなは同じ校舎で学び生活していきます。学年全体で友達の輪が広がる手応えは、いろんな交流や体験を重ねて高校生になってからやっとつかめるものです。そのつながりや絆は、将来大人になってからも大事なものになります。

新しいクラスでの出会いを大切に、協力と助け合いを重ねて、明るい和やかなクラスを築いて欲しいと思います。これが私の第一の願いです。初めて身近になった人にも、積極的に声をかけてみましょう。友達に恵まれた人は、元気のない人が周りにいたら、優しく話しかけてみて下さい。同性も異性も、クラスメイトには「おはよう」「さよなら」と挨拶し、「ありがとう」と声をかけてみましょう。小さな心がけが温かな輪を広げていくものです。新しい担任の先生方も、大きな願いを持ってクラスの運営を進められます。学年や学校の行事のあとで「みんなと一緒で、このクラスで良かった」と思えるようにしたいものです。居心地が良くて活気あるクラス、時に意見の違いがあってもちゃんと話し合えて、楽しく取り組めるクラスをつくっていって下さい。

第二のお願いは、もちろん皆さんの勉強に関することです。入学した時の初心にかえって、教科の学習におもいきり取り組み、学力と成績をパワーアップする一年間にしていって欲しいと思います。先月の終業式で、この春に先輩達が残した素晴らしい大学合格の実績についてお話しました。ここにいる皆さんも数年後には、大学受験という試練に向き合います。自分が行きたいあこがれの大学や進路にどこかで出会い、その合格を目指して全力で取り組むことになります。 大きな夢を実現するには、一歩一歩、地道で粘り強い取り組みが必要です。中学時代のポイントは、「自分なりの勉強のリズムをつかみ、自主的な学習習慣をしっかり確立する」ことです。これまでの生活と学習を振り返ってみましょう。毎日の授業に集中する、宿題を前向きにやりきる、試験前でなくても復習や予習に取り組む。こうした姿勢が身についているのか、自問自答してみましょう。成績が伸びる人達に共通しているのは決意です。そして集中力と持続力です。苦手な教科も、どうせダメだと決めつけずに、まず「小さなパーフェクト」を本気で心がけて、小さな成績アップを積み重ねていきましょう。

そして、これからの学校生活、受験勉強、さらにその先の大学や仕事の世界でずっと必要になると思われる大事な力は、「続ける力」です。
皆さん、長い間日本で一番難しいとされてきた試験は何か、知っていますか。それは司法試験という国家試験です。弁護士や裁判官をめざす人はこの試験に合格しないとなれません。その受験指導を行う塾の先生で、合格を導くカリスマ専門家と言われる伊藤真という先生がいます。その先生は、司法試験に合格するのに最も必要な能力は、「頭の良さ」ではなくて、「続ける力」であると提起しています。「司法試験は特別に優秀な人だけが合格する試験ではなく、ごく普通の人が努力を続けていけば合格できる試験だ」というのです。法律の勉強は語学の学習に似ていて、マスターするには何よりも「慣れ」が必要であり、かなりの時間はかかるが地道にコツコツと勉強を続けるしかない。あきらめないで「続ける力」を発揮できる人のみが、合格の切符を手に入れることができると強調しています。

ただし、続けるためにはコツや技術もあるとしています。皆さん、「三日坊主」という言葉を知っていますか。経験のある言葉でしょう。自分にもたくさんの経験があります。恥ずかしい例ですが、運動不足を解消したいと買ったランニングマシンや中年になって出てきたお腹をへっこませたいと買った腹筋マシンは、三日坊主どころか、一日坊主か二日坊主でした。ダイエットや禁煙や楽器など、決意して始めたけどなかなか続けられずにあきらめる大人はおおぜいいます。伊藤先生は、続けられないのは「時間がとれない」からでなくて、「生活のリズムに組み入れる工夫が足りないから」だと指摘しています。毎日の歯磨きや入浴のような「生活の原則」に組み入れる決意と努力がカギだというのです。

そのために伊藤先生が指摘するポイントから少し紹介してみます。まず「ゴールからの発想」という考え方です。山登りやマラソンも頂上やゴールが何キロ先にあるかわかると最後まで頑張りきれるものです。大会の優勝を目指すスポーツ選手も同じです。自分の目指すところが具体的にイメージできれば、限界を感じて挫けそうになった時、目の前の壁を突き破るエネルギーが沸いてくるものです。
この春、東大に現役で合格した二人の先輩も、早い段階から目標となるゴールを明確に意識して地道に取り組んでいました。こだわりの第一志望校が決まれば、まっすぐに最短距離をつかんで取り組む勉強が可能になります。
「全体から部分へ」ということも強調されていました。中学生の皆さんの勉強でいうなら、教科書や参考書やテキストの「全体像」をまずつかむことになります。いろいろな本を勉強するときに、その本の目次に注意してみましょう。「これから進める勉強は全体ではこんな感じなんだ」とイメージを持っておき、自分の勉強の進行状況をいつも意識していくと、学習と理解がはかどるのです。

皆さんの学校生活でも、これらのアドバイスは参考になるはずです。ふだんの一週間の生や習い事などで忙しい時でも、この勉強だけは必ずやるという決意をして「続ける力」を発揮していきましょう。まず好きな教科で例えば「今回は必ず90点以上取る!」と心決めして、必要な勉強の全体像をつかんでパーフェクトにやり切ることです。クラブ活動だったら重要な大会でここまで勝ち進むぞ、という目標を持って練習を続けることでしょう。学校行事ならば優勝という明確なゴールを意識して取り組むことになるはずです。特に「勉強と部活の両立」は中学生の皆さんの重要な課題です。多くの先輩達もいろんな苦労を重ねながら立派に実現していきました。

伊藤先生の本で、いま『続ける力』という幻冬舎新書が注目されています。その本の始めで、大リーグマリナーズのイチロー選手の次の言葉を引用しています。
「夢をつかむことは一気にはできません。小さなことを積み重ねることで、いつの日にか信じられない力を出せるようになっています」「今まで自分がやってきたことをしっかり継続することが、イチローという選手の能力を引き出すためには外せないことです」「過去の積み重ねがどれだけ大事なものかを感じています。それがなければ今の技術や精神は作られなかったのですから」

大きな夢や目標を掲げて早めに行動を起こすこと。そして目の前の小さな課題を大切にして一歩一歩地道に努力を続けること。この両方が重要なことを、イチロー選手も指摘しているのです。
皆さん一人ひとりが、この新年度を充実した一年にしていけるように祈っています。一日一日を大切にして、自覚ある暮らしを築いていきましょう。
以上で、私からの挨拶を終わります。