第467回 Mr.Childrenからのメッセージ

2012年5月30日

 Mr.Childrenがデビュー20周年を迎え、今世紀以後の歩みをまとめた久しぶりのベストアルバムが話題になっています。
 あまりにメジャーな人気バンドではありますが、数々の素晴らしい歌とメッセージの世界に私も惹かれ続けています。まだ視聴の出会いのない高校生や中学生の諸君にも、また保護者の方々にもどこかで聴いて頂く機会があればと願って、今日はこのバンドの魅力を主題に紹介させて頂きます。

 ミスチルの楽曲は、ボーカルの桜井和寿氏がほとんど作詞作曲しています。メッセージ性あふれる詩が、豊かなメロディーに乗って聴き手の心に届けられます。大切な人や日々の暮らしへの想いから、時代の風潮への申し立てと決意、人々への温かな呼びかけなど、数々の名曲は多くの人びとに口ずさまれ、人生の伴奏歌になりました。若い頃は時代や社会への闘争的な表現も注目されましたが、年齢を重ねて家族や日常を改めて愛おしみ、人生を楽しみ、生命や感受性を鼓舞して前へ踏み出そうとする姿に共感します。様々な人生経験を重ねて人間的な魅力を深める様子が印象的です。過去の人気曲の遺産に頼らず、またリフレッシュして時代に向き合い優れた新曲を紡ぎ出すのが驚異的です。
 同級生を母体に成長したこの4人組のバンドに自分が向けたい称号は「日本のビートルズ」です。20年間も第一線で活躍してきたこのバンドは、わが家も揃って別格のファンであり続けます。

 今回発表された『MICRO』及び『MACRO』の中から、つらくも3曲だけ大好きな名作を選んで紹介してみます。
 まず「Sign」。TVドラマの主題歌で、障害を持つ恋人への想いが反映される歌です。「ありがとうとごめんねを繰り返して」ささやかな日常は歴史を刻んでいきます。ふたりの間の何気ないサイン、ふれあいの愛おしさを歌い上げます。「残された時間」の減る中高年の人たちにもぜひとも聴いてほしい珠玉のバラードです。
 次に「彩り」。人びとの日常はふつう長い仕事の時間に追われます。単純な作業に追われる「モノクロ」な日々にも、人々の喜びや笑顔につながるささやかな生き甲斐があり、様々な色に彩られる時があります。人びとのつながりの中で自分も寄与している手応えがあるから、前向きに生活していこうと励まされます。
 そして「花の匂い」。突然戦地へ、残酷で不条理な死へと追いやられたある庶民を描いた映画の主題歌です。永遠の別離という絶望に直面しても、どんな悲惨な境遇の下でも幸せの種は植えられ水を撒いていける。死者は生者の心に生き続け、温かな呼吸やまなざしを届けてくれる。詩の奥深い力に心から感動します。

 『HOME』や『SUPERMARKET・FANTASY』など近年のオリジナルアルバムから聴いて頂くのもお勧めです。ミスチルの名曲は高校生や中学生の諸君にもきっと癒しや元気や勇気を届けてくれます。退屈や疲労、行き場のない気持ち、見慣れた景色に、励ましや潤いや発見を届けてくれるものとお勧めしたいのです。