第490回 「内向的な人」が秘めている力とは(1)

2012年6月26日

 中学生~高校生の時代には、自分の性格について悩む人が少なくないと思います。日本の若者は「自己肯定感」が弱いということもしばしば指摘されます。
 たとえば、「ネクラ」という言葉が生徒どうしの間で使われることがあるでしょう。皆が盛り上がっている時、はずんでいる時に、その場の雰囲気に乗っていけない経験もよくあることでしょう。それが何回も続くと、自分の性格やいのちの傾向として受けとめるかもしれません。

 筆者はひとりっ子として育ちました。当時の教室では少数派でした。田舎にいた小学校時代、友だちと野球や陣取り遊びや虫取りなどもよくしましたが、ひとり遊びの時間もすこく長かったです。架空の相手を設けて空想の世界に遊ぶこともありました。中高時代は行事や部活もがんばりましたが、ひとりでいる時間は大事でしたし、大学時代にも周りの高揚についていけない時がありました。いつの時代にも、陽気な人とか笑顔を絶やさない人がうらやましく感じられることが少なくありませんでした。

 先日テレビで、あるスピーチの番組を観ました。NHK教育の「スーパープレゼンテーション」というシリーズで、米国のある女性が大勢の聴衆に語りかける内容でした。スーザン・ケインという作家ですが、そのスピーチはなかなか興味深く、性格のことで悩める若者にもぜひ聴いて欲しい内容でした。自分なりにやや強引ですがその主旨をまとめてみます。

 「内向的な人」は、この社会では誤解や偏見とか冷たい視線を受けやすい。しかし実は、豊かな創造性やリーダーシップを発揮できる可能性を持っている。人間の中の多様性を認知し、それぞれの自己実現をサポートし合えるような人間関係を築いていきたい。

 これでは押しつけの感じになります。そこで次回は、スーザン・ケイン女史の魅力的で説得力ある主張について、彼女のたどった人生の遍歴も交えた話について、もう少し具体的にたどってみたいと思います。(明日に続く)