第400回 『思春期の男の子の育て方』に学ぶ
区切りの第400回となります。今日は、最近出版されたある本を紹介いたします。『お母さんにはわからない思春期の男の子の育て方』(中経文庫)です。
著者は、淡路雅夫先生。浅野中高に40年間勤務し、同校の校長を務められた方です。現在は教員の幹部研修や初任者研修、親の子育てについての講演や執筆、青少年リーダー養成のための活動や研修指導などで幅広く活躍されています。私も淡路先生の情熱あふれるご講演や著作に出会い、様々なことを学んできました。直接にお話を頂いて課題意識を深め、勇気を戴いたこともあります。心から尊敬する教育者でいらっしゃいます。
この本は、子育ての不安に日々悩む母親への、心強いアドバイスの書です。
「思春期」は、子どもが最も大きな不安に直面し悩む時代です。身体は急激に変化し、同時に心も「疾風怒濤」と形容されるほど激しく揺れ動きながら、子どもから大人へと成長する時代です。特に男の子は、急に無口になったり、親の言うことに反抗したり、変わった身なりや趣味に突然はまったりもします。「可愛くて素直だった子ども時代」との落差に親は戸惑い、関わり方に悩み続けることが多いものです。
この本で淡路先生は「親の役割は。子どもが安心して自己と葛藤できる環境づくりをしてあげることです」との基本精神から、母親達を励まし、様々なヒントを届けられます。長い教員生活を通しておおぜいの母親から悩みや相談を受けられ、また家族問題の研究会でも長く取り組まれてきたご経験から、両親が要点を得ない見方や対応に陥る傾向も十分理解され、平明にして奥深い「子育て支援」の課題提起を重ねていかれるのです。
この本の目次からご紹介しましょう。
第1章 「うちの子、このままでいいのかしら?」と心配になったら
第2章 「うちの子、前と違うみたい」と思ったら
第3章 学校・勉強とどうやってつきあうか
第4章 今、大きな問題をかかえて困っているお母さんに
第5章 子どもを育てるのは、何のため?
「いつも子育てに一生懸命な」親御さんへの温かい眼差し。淡路先生のお話や著作から常に感じることです。思春期に入った我が子の変化に少しずつ微笑みが薄れ、迷い始める親御さんへの応援に徹したい!との先生の情熱に心をうたれます。思春期に入ったからこそ、様々な体験をさせ、日常の会話を豊かにし、広く人や社会、自然に関心を持てるように働きかける親の役割があることに気づかされます。この本には「子どもに勉強しなさいというよりも、自主的に学べる力をつけられるように支援しよう」、「就職すれば一生安泰な時代は過去のもの。親子でこれからの生き方とそれを支えるキャリアを形成する方法を考えよう」など、心に留めるべき骨太の金言がちりばめられています。
在校生、受験生のお母様方、お父様方にもぜひ幅広く読んで頂けたらと願っています。また淡路先生の別の著作で、『人に育てられて生きる~社会が子どもの学校だ』(社会評論社)も強くお勧めします。淡路先生の人生のご軌跡、教育や社会への深いご見識と問題提起を、より詳しく学ぶことができます。