第366回 中学道徳講演会の感動をお伝えします
今日は、第3回の最終入試説明会を行います。受験生と保護者のお揃いを中心に500名前後もの方々にご来園いただく大切な一日となります。
入試直前学習会や相談会など全校にまたがるプログラムを用意するため、休校の扱いですが、生徒会の役員諸君には補助でお手伝いをしてもらいます。ご来園頂いた皆様にとって、入試の本番へ向けた見通しを広げ、大いなる励ましの機会にして頂ければと願っています。
さて本日は、さる6日に行った中学・道徳教育時間の講演会について紹介いたします。当日の通信・第362回でその主旨を紹介していますので合わせてご参照下さい。
指籏博先生のお話は判りやすくて強烈でした。大震災勃発から9か月近くが過ぎて、世間も情報慣れしてやや風化する風潮もあると思われます。今回のご講演は改めて当時の凄まじい状況を再認識し、かけがえのない日常生活をかみしめ、今後への備えを自覚する、貴重な機会となりました。
指籏先生は、5月に藤沢市らの救援メンバーのお一人として石巻市内に行かれ、主に住民避難所の運営援助のお仕事をされました。その後も10月まで毎月のように合計5回も石巻にボランティアとしても足を運ばれ、継続して現地の人びとと交流し、地域の変化をご覧になってこられました。現在もサラ地となったまま復興のメドがま
だ立たない区域も広いと伺いました。
5月に入られた時に撮られたお写真はあまりに過酷な風景でした。延々と続く瓦礫の山、大津波で全てがさらわれた跡地、潰れたクルマの山、倒壊して横転したビル、大きな家屋に船が突っ込んだりバスが乗り上げた場面、塩水でダメになった見渡すばかりの廃棄家電・・・・。
一方で石巻市内の地図が示されました。壊滅した地域、不幸が集中したスポット、無傷に近い向こう側、条件の少しの違いが明暗を残酷に分けた経過。写真と地図の両方により、現地の状況が浮かぶリアリティが印象的でした。
また避難所の様子もお写真を交えて説明されました。食事のこと、共同生活ゆえ全て必要なことは当番制を組んで助け合ったこと。個室はおろか最低限のプライバシーも保証し難い環境。極度に狭苦しい中で何週間も続く生活。夜9時過ぎに消灯となり、音楽も聴けず勉強できない同世代の人たちのことなど、指籏先生はマイクを持ち生徒の間をぬって質問もされながら語りかけられました。指籏先生が現地でお撮りになった貴重なお写真をいくつか紹介させて頂きます。
そしてそんな不自由な避難所生活が、ここ湘南地域でも近い将来に起こりうる可能性がある事を受けとめるべきと伝えられました。実際に藤沢市内はもちろん、西湘地域から三浦地域まで海に近い地域に居住する在校生の皆さんは、挙手によってもかなりの人数に及ぶことが確認されました。
そんな生活など無縁であることを祈りつつ、最悪の事態も想定しなければなりません。被災地の現実を知るだけでなく、そうした想像からも自分をとりまく家族や地域や友人のかけがえのなさをとらえ直し、大切な絆を再確認して自分のふるまいを考えていこうとの提起を頂きました。さりげなく語られましたが、指籏先生ご自身も、近年最もつらい出来事に続けて直面されていました。中学生の諸君は、本日この機会に先生から頂いたお話や呼びかけを、もう一度心の中で反芻して欲しいと思います。
休憩をはさんで質疑応答の時間もとられました。始めは出にくい感じでしたが、ある中1生の質問をきっかけに次々と手が挙がり、指籏先生から「いい質問ですね」とお誉めを頂きながら、それぞれの補足説明で私達の理解はさらに深められました。「避難所生活でペットはどうしていたのか」「着替えはどうやっていたのか」「小さな子ども達はどう遊んでいたのか」「病院もこわされた中で病人の診察や治療はどうやったのか」「新聞も電気もない時期にはどうやって外部の情報を得ていたのか」等々、たくさんの質問が寄せられました。
指籏先生はていねいに答えて下さいました。先生はいまご担当の藤沢市環境部のお仕事の他にも、市の体育協会・テニス協会・科学少年団などの役割もお持ちで、様々な方々を対象にレクチャーの経験が豊かな方です。明るく行動的なお人柄が魅力的な方です。講演はとても判りやすく問いかけもお上手で惹きつけられました。
盛大な拍手で終わった講演会の後でも、様々な貴重なお話を頂きました。
指籏先生は、16年前の阪神淡路大震災直後の神戸市にも入られています。新潟の中越地震直後にも複数回行かれています。神戸のシューズ工場、石巻の原油タンクや魚市場の被災ゆえの独特の惨状。神戸は地震が中心で犠牲者がその場で見つかりやすかったのに対して、東北沿岸は津波による犠牲者が遠方まで運ばれ身元確認が著しく困難なことが多かったこと。現在も海上で続く捜索。被災地での下水道の打撃や液状化現象。藤沢市内に最近起きている環境問題。
ここ湘南地域で万一の事が起きた時の現在の想定なども合わせて、詳しく参考になるお話を伺いました。最後に藤沢市内で石巻や女川の物産を扱っているお店のことに触れられ、身近な支援活動の一環として生徒達や保護者の方々にもご紹介下さいと話されました。
今回私達のために多大な時間かけて準備して下さり、今後につながる大切な講演をして下さった指籏先生に、改めてお礼を申し上げます。