第1345回 ノックス校訪問で考えたことのいくつか

2017年9月8日

オーストラリアは、ダイバーシティを生かした教育づくりを

 湘南学園中学校高等学校の教育的特色の1つに、グローバルセミナーズの多様な展開があります。夏季休暇に入るやいなや、オーストラリアに、カナダに、アメリカに、そしてリトアニア・ポーランドにと事前学習をへて目的意識をもった生徒の皆さんが旅立っていきました。
 
 そうしたなかオーストラリア・メルボルンにあるノックススクールを川井学園長と共に表敬訪問する機会を得ることができました。現地滞在は実質2日間という短いものでしたが、同校での「オーストラリアセミナー」の様子も含め、見聞したことを通じて考えたことのいくつかをお伝えできればと考えます。
 
 1つは、「Kー12」というシステムで育てる教育の可能性について。
 kindergarten、elementary school、junior & senior high schoolを併せ持つ総合学園の連携・接続・一環という利点を生かしたシステムを、広大で豊かな自然のなかで進めていました。トータルな教育目標が示され、その実現にむけて全てのパートは少人数構成を基本とした自主的で刺激的な授業を展開していたのが印象的です。
 
 2つは、「教職員サロン」がつくるノックス教育文化について。
 いわゆる教職員室はなく、ソファが置かれ、壁に管理職からの案内、各種掲示などに加え冷蔵庫や水周り整っている「教職員サロン」では、相談や事前の準備、寛ぎの場となり、鋭気を養う場になっていました。
 
 3つには、「表現活動」は人として持ち合わせるべき大事な素養ということについて。
 ノックス校には音楽や演劇、芸術など表現活動を大事にする文化が根付いています。それを披露する擂鉢型の素晴らしいホールや空間もあり、そこでは実際の指導が行われてその一端を披露してくれました。表現活動は一部の秀でたものが取り組むのではなく、人として持ち合わせるべき感性や情操を豊かにすることを大事にしてることが感じられました。
 
 4つには、オーストラリアは「ダイバーシティ」を大事にしていることについて。
 ノックススクールはインターナショナルスクールも併設しています。そこはアジアを含めて多様な地域から集まってきた生徒で構成されています。このように、オーストラリア、とりわけノックスから近いメルボルンには、世界各国の料理を食べられるといわれるように、世界各地から移住する方々が多いとのこと。異質な他者同士がお互いを認め合い助け合う環境を持ち合わせる場としてメルボルンは「世界一住みやすい街」という評価に通じるものと考えました。
 
 5つめは、ノックスをはじめ先生方の働き方について。
 ノックスの先生のお話では、15時を過ぎると、先生方には帰られる方が増え、夕方ともなると冷蔵庫で冷やしたワインなどを傾け教育談義をする先生もおいでとのことでした。グランドバカンスもあり、ノックスに限らず10年間勤続すると、6ヶ月のサバティカルか加給のどちらかをとることができるなど、日本における教員の教育労働環境を豊かにすることの意味を考えさせられた。
 
 今回の表敬訪問を通じて、今後とも湘南学園とノックススクールとの提携を強化していくことで双方の合意が得られました。「オーストラリアセミナー」は、ノックスクールの関係者の理解と友情のなかで育まれてきたといえます。9月後半には「ノックスジャパンツアー」も予定されており、その成功のために湘南学園としてもその準備を進めているところです。