第1400回 なぜ大学へ行くのか
11月の朝礼では、「高校3年生の皆さんに伝えたいこと」をテーマにお話をさせていただきました。本日の校長通信は、高校2年生の皆さんへのメッセージです。「今、私が皆さんの担任だったら…」という気持ちでお伝えしようと思います。
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高2の君たちへ
君たちにとって、いよいよ自分の人生を自分の力で切り拓いていく時が来た。
君はどんな人生を歩むのだろうか。
君は君自身の人生をどのようなものにしていこうと考えているのだろうか。
高校を卒業した後、君たちはそれぞれの道へ進んでいくことになる.
そして、「他者と同じ道はない」と言ってもいいのだろう。君たちの多くは、卒業の進路を問われると、「(友人と同じように)自分も大学に進学します!」と言う。ただ、高校卒業後は友人と同じように…というわけにはいかないのだ。「大学に進学する」というところだけが自分の周囲と同じであるだけで、「何をして過ごすのか」は人によって全く違うということを考えてほしい。
では・・・・・、大学では何をして過ごすのか。
君は、大学生活に関してはっきりとした考えを持っているのだろうか。
大学に進学するのは何故なのか。
大学にいったい何があるというのか。
・・・・だから次の問いから始めなければならない。
そもそも大学には絶対に行かなければならないのだろうか?
そんなことはない。大学に行かなければならない絶対の理由など存在しない。湘南学園がたまたま大学進学を考えている学生が大半を占めている学校であるということから、なんだか大学進学が当然のような空気が流れているだけのことではないか。周りを見渡せば、「大学に行かない友人がほとんど・・・」という高校もたくさんある。すべての高校生が大学に進学するというわけではないのだ。わが国で、高校生の大学進学者数が半数を超えるようになったのは、ごく最近のことなのだ。
大学に進学することがまるで普通のことのようになっている湘南学園では、意義をあまり考えずに大学進学を決意する学生諸君もいるのではないだろうか。
実はそこには問題があるのだ。自分の人生を決めるのに「あまり考えずに・・・・」ということがあってもいいのだろうか。そんなことはない。たった一度の人生なのだから、ちゃんと考えて決めるべきだ。それには・・・・、様々な選択肢の中から自分の進む道を選ぶ際に、「徹底した自問」が必要なのだ。
つまり、「いかにして自分は生きるべきか」という問いである。
素晴らしい人生は、それぞれが自分の意志で見つけ、築くべきなのだ。
だからまず、自分の進路は周囲の目や世間体(「大学くらいは出ておかなければ・・・・・」というもの)を気にしたりせず、自然体で素直な心で見つめて考えることができればよいのである。
ここで、進学をしようと考えている君に問いたい。
「高校を卒業した後に何を学びたいのか。」
君は本当にこの問いを自分にぶつけたのか。本当に考えたのか。
自分の人生だから、本気で自問し真剣に考える必要があるのだ。しっかりと決意をして自分の人生を築き上げていって欲しい。そして仮に大学に進むのであれば、その大学生活には実りがなければならないのだ。刹那的な空しい大学生活を送ってはいけない。真剣に生きなければいけないのだ。
真剣に生きる・・・・。
実は、これは大学でなくても同じなのである。真剣に生きることによって、自分の人生に何かが実るべきなのではないだろうか。
何かが実る・・・・。
それにはどうしたらいいのか。
果たして、それは本当にできるものなのか。
実は、できるのだ。
その秘訣はただ一つだ。
意志をもつことだ。
高校を卒業して、その後どの道へ進んだとしても、真剣に自分の人生を見つめて決意をして進んだのであれば、きっと何かをつかみ取ることができる。大学に進もうと、料理人をめざしてフランスへ渡ろうと、そこに「人生の目的を実現させるための意志」があればきっと豊かな実りがある。そしてその実りは自分を幸福にしてくれるのである。
一番いけないのが、「目標はあるが努力はしたくない・・・・」という態度。
そもそも、そのようなものを目標とは言わない。「寝言」のようなものである。「試合で勝ちたいのに練習したくない」というのと同じだ。
そのような考えには未来はない。そのような考えで生きていくと、結果として残念なことが起こってしまうのではないだろうか。
確固たる意志や決意を伴うものを「目標」という。
もし君に目指すものがあって、やるべきことがあると分かっているのなら、「本当に夢をかなえたい!」と、真剣に自分自身に言い聞かせて、「やるべきだと思うこと」を当たり前のように実行すればいい。
「本当はちゃんと取り組むべきなのだ・・・」と思う気持ちがあるのなら、そこから絶対に離れるな。逃げるな。・・・・と、私は言いたい。
逃げないでじっくり取り組んでいるうちに、きっと「気がついたら何でも乗り越えることができるようになった強い自分」を発見するはずだ。
大学進学であろうと、フランス行きであろうと、私たちが君たちに望むことはただ一つである。
「夢があって目標があって、それに向けて努力ができる『生きる力』をもった人間になれ!」・・・
それだけである。だから、君たちが安易な姿勢を見せた時、私たちは怒るのだ。君の大切な人生を軽く見るようなことを許したくないのだ。
「若い時代に自分を鍛えた人は後の人生で負けない」という人生の法則を、私たちは知っている。いや、思い知らされたのだ。「わが青春に悔いあり」なのである。
やがて18歳になる君たちに一番求めたいことは、「生きる力をつけること」なのだ。