第1406回 「湘南学園ESD入試に寄せる期待」
湘南学園中学校2019年度入学試験は、2月1日、2日、3日、そして2月6日の合計4日間で実施されました。
2月1日の午前には、「湘南学園ESD入試」という新しいタイプの入学試験(午後は従来通りの国語と算数の2科目入試)が実施されました。
この新しい入試のお話は、「受験生の皆さんが持つ素晴らしい力を発見したい!」という現場の先生たちの願いから始まったのです。
毎日の学校生活の中で、若者たちと接している本校の先生たちは、それぞれの生徒諸君が持つ素晴らしさを毎日のように発見しています。生徒諸君はそれぞれ実に豊かな力を持っています。
その力とは、学力に関するものだけではなく、
例えばあるテーマについて友だちと意見を交わす力や、
自分が考えたことや感じたことなどを相手の心に届くように文字や言葉で伝える力、
または、相手の声を大切に聞き取ろうとするリスペクトの精神を持つことができる力など、
人生の中で最も大切なものばかりです。
彼らは人としての魅力があります。生徒諸君の学校での様子を見ていると、それぞれの輝きがあります。それらは授業中だけではなく、休み時間や委員会活動、放課後の部活動など実に様々な場で見られるのです。若者の素晴らしさや魅力を現場の先生たちはずっと見てきたわけです。
その先生たちから「受験生は、学力のみならず人としての豊かな力を持っている。だからそういう力を発見するような入試をしたい!」という声が上がってきたのです。
「ならばやってみよう!」とわたしたち湘南学園の教員たちはじっくりと相談をして、ついに実施することを決意したのです。
しかし、これは入学試験です。受験生は人生をかけて入試に臨みます。意義のある入試でなければ許されないのです。実施するからには徹底的に準備をしようということになりました。
現場の中から新入試プロジェクトチームが結成され、準備が始まりました。日々の仕事が終了してからの夜の作業が続きました。受験生のみなさんが「受験してよかった・・・・」と思ってくれる入試にしなければいけない・・・・それが先生たち共通の思いでした。
一方、私たちにはちょっとした苦労もありました。
初めての試みだったものですから、実際の過去の出題例を受験生にお示しすることができないわけです。
「どのような入試になるのか分かりづらい・・・・」という不安に対してどのようなご案内をすることがよいのかなど、私たちも様々なことで悩みながら入試準備を進めてきたのです。
受験生のみなさんだけではなく、保護者の方々、受験生を指導してくださる指導者の先生方にとっても「手探りの準備」があったのだと思いますが、結果として多くの方々に受験していただくことになりました。
お礼を申し上げたいと思います。
さて、この新しい入試は二部構成になっています。
(第一部)入試の前に「小学校時代に取り組んだこと」と「湘南学園で挑戦したいこと」をテーマに90秒間で本人が語る様子を動画にして提出してもらいます。つまり「これまで」と「これから」を語ってもらうというものです。
(第二部)2月1日午前、記述・論述試験(テーマはSDGsの17のゴールに関する出題)です。知識を問う出題ではありません。
- 試験当日に提示される資料をもとに考えられることを書けるだけ書き出す。
- その状況に自分が置かれたらどのように感じるかなど、「テーマ」を自分に引き付けて考えて述べる。
- その「テーマ」に関する「現状」を改善するための自分なりのアイデアを提案する。
・・・という問題なのです。
さて・・・・、
この第一部の「動画」では、受験生みなさんに「これまでの人生」と「自分のこれから」を自分の言葉で語ってもらうということになっています。
・・・・私は、この「動画」にある期待を持っていました。・・・・
私が期待したことは以下のようなことなのです。
「動画作成の際には、受験生のみなさんがこれまで歩んできた人生の時間を振り返るために、ご家族や周囲の方々と共に様々なことを語り合う場を持ってもらえるのではないか。そして、これまでの自分の人生の中で、どのような素敵なことがあったのか、どのような成長の機会があったのか、どのような素晴らしい出会いがあったのかなどを、温かい気持ちで振り返ってくれるのではないか。そうした自身の人生の振り返りが、やがて自分自身を肯定する気持ちへと繋がり、それが今後の人生に希望を持つ一つのきっかけとなるのではないか。そのような明るい希望を見つめて中学校生活を始めてくれたら・・・・。」
ご縁があって本校に入学することになった皆さんだけではなく、他校に進学する方々にとっても、このESD入試に取り組んだことが、受験生の皆さんにとって「人生の追い風」となってくれたらいいな・・・・。
私は、そう思いながらこの入試を見つめていました。
受験生のみなさん、本当にお疲れ様でした。いよいよ春から中学生ですね。中学校は楽しいですよ。充実した日々となるように祈っていますね。
そしてご家族の皆さま、塾の先生方をはじめ関係の皆さま、ありがとうございました。
*SDGs:2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。その17のゴールとは「貧困をなくそう」や「すべての人に健康と福祉を」、そして「人や国の不平等をなくそう」、「平和と公正をすべての人に」など、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけるものとなっています。