第1426回 稲澤先生をご紹介
木下:稲澤先生、こんにちは。まず、先生のプロフィールをお聞かせください。
稲澤先生:私は、神奈川県に生まれて、小学校、中学校、高校、大学と、ずっと神奈川で育ってきました。ですから、ものすごく神奈川県に愛着があります。湘南学園という学校を初めて知ったのは、自分自身が高校受験の時でした。あのころ湘南学園では、高校からの入学者を若干名募集していました。そのとき、私は湘南学園を受験しようと思ったのですが、「若干名」だと人数がどれくらいなのかわからないという心配を、担任の先生にされ、残念ながら受験を断念したことを覚えています。それから幾星霜(いくせいそう)経って、教員として湘南学園に奉職させていただくことが出来たということで、自分としては非常に嬉しい気持ちでいっぱいです。
木下:こちらこそ、先生のような方をお迎え出来て、としてもうれしいです。
稲澤先生:湘南学園は立地や環境も良いですが、教師にとっても、生徒にとっても良い環境だと思います。素晴らしい学校だなと思っています。
木下:稲澤先生が、国語という教科を選ばれた理由は何ですか。
稲澤先生:実はですね、将来なりたいものを考えた時に(他の職業を知らなかったというのもあるのですが)、頭の中には「教員になる」という考えしかありませんでした。小学校の時は小学校の先生に、中学校の時は中学校の先生に、高校の時は高校の先生に・・・と考えていたのです。中学校2年生までは歴史が好きだったので、歴史の先生になりたいと思っていたのですが、中学校3年生の時に、学校や塾で出会った国語の先生の影響で、「国語っておもしろいな、言葉って面白いな・・・」ということを知り、それ以後、言葉というものに興味を持ち始めました。大学を選ぶときにも、当初は、言葉を中心として学ぶ「国語学」を勉強したいと思っていたのですが、ただ、古典を勉強しているうちに、作品の歴史的な背景などにも興味が湧いてきまして、それをぬぐい切れなかったのでし ょう。やがて「国文学」に傾いていきました。そして、「国語」全般について、楽しく語れるようになりたいと思うようになりました。
木下:先生は、授業をなさる際に、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。
稲澤先生:国語という科目は、とても自由度が高い科目ではないか思っています。国語という言葉から考えてみれば、「日本語」の意味合いを強く感じてしまうかもしれませんが、現代語、古語、外国語はもちろんのこと、内容によっては歴史や経済、それから法律など、本当に我々が生きている社会全般に関して、国語という科目は絡んでいける科目なのだというふうに考えています。
かつて灘高等学校には、橋本武先生という方がいらっしゃいました。先生は、「銀の匙(さじ)」という小説を3年間かけてずっとスローリーディングさせていく・・・という授業をされていました。その先生のように、できることならば、その文章一つひとつの中から言葉を丁寧に拾うことや、あるいは内容を丁寧に拾っていくなど、実際に書かれている内容以上のものを生徒のみなさんに提供していきたいのです。
木下:授業で何か工夫をしていらっしゃいますか。
稲澤先生:中学校3年生の時に授業を受けた先生の影響があり、国語科の教員になろうと思いました。その先生が話している内容が面白い、その先生自身が面白い・・・、というところから、だんだんと興味や関心というところへと繋がっていくことがあったのだと思います。
私も授業で、いろいろな話をしていくのですが、根底では、「自分自身が楽しくないと聞いている方も楽しくないのではないか・・・」と常に考えるようにしています。
木下:湘南学園の生徒に対する印象をお聞かせください。
稲澤先生:私は、湘南学園の生徒はとても素直だと思います。聞いたことを、まず自分の中に受け入れてみるという土壌がちゃんとできていますね。もう卒業した生徒のお話になりますが、あるとき、私の授業中に落語を見せたことがありまして、その子が翌年、突然私のところにやって来て、「先生に見せてもらったあの落語家の落語をDVDとか動画などで全部見ました」と言いに来てくれたことがあったのです。学園の生徒にはそういう素直さがあるのですね。私の授業が、そのような何かに興味を持つきっかけになってくれればよいのではないか・・・と思っています。
木下:生徒にメッセージをお願いします。
稲澤先生:「学ぶことは楽しいのだ」ということをまず念頭に置いて学んでほしい。暗記が辛いとか、漢字を書くのが面倒くさいとかいろいろと嫌な部分、面倒くさい部分はあるとは思いますが、苦労して学んだことが使えるようになると、こんなにもこの世の中は面白いのだということを自覚できるような、そんな学びにつなげてもらえたらと思いますね。
木下:最後の質問です。先生ご自身の目標を教えてください。
稲澤先生:生涯現役でやっていきたいですね(笑)。