第213回 高校・中学の始業式と教室移動を本日実施

2011年4月7日

 今年度、ひきつづき湘南学園中学高校の校長を務める。山田明彦です。
本学園のキャンパス内外の様々な動きや取り組みを、この「校長通信」でこれからもご紹介に努めてまいります。校外の方々、校内の方々などに広くお読みいただけたらと願っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

ようやく春らしい日ざしと気温に恵まれ、校舎の前に並ぶ桜が開花してまいりました。この週末には各地の桜が一気に満開を迎えるのではないかと思うと、少し気があせる思いになります。

この春休みは、本校もかつてない制約のもとに置かれました。交通と電気の保証状況などを考慮し、今週日曜日からクラブ活動や生徒会活動の再開を認めました。今日は予定通り、高校・中学別の始業式と教室移動を行いました。
 新任の先生方の紹介とご挨拶、担任と学年スタッフの発表、学年ごとの机と椅子の移動、クラス開きと続く大きな一日でした。昨年度末の荷物と教科書など新年度の配布物が重なって、在校生諸君は帰り道が少し大変になったことをおわびします。

新学年のクラスに入る期待と不安は、毎年恒例とはいえ、生徒諸君にとって大きなものがあるでしょう。前からの友達と楽しく話せる一方で、隣の人、近くの人、同じ班になった人、少し淋しそうな人などに、少し気持ちを前にして挨拶し、声をかけてみてほしいと思います。出会いと縁を大切に、心を開き合えるクラスを皆でつくっていってほしいものです。

それでは最後に、今日の始業式で私がお話ししたことを、中学の方の挨拶で代表して紹介いたします。

皆さん、おはようございます。今年度も在校生の皆さんとのいろんな接点を大切にして、精いっぱい取り組んでいきます。どうかよろしくお願いします。
昨年度の終わりは、クラス最後の顔合わせもできず、部活動も生徒会活動もできない不自由な春休みを過ごさせてしまいました。この日曜日から再開して本日の始業式を迎えましたが、ここに改めておわびの気持ちをお伝えします。
さて去る3月11日、東北関東地方に起きた巨大な地震と津波により、更に今も続く福島第一原発の深刻な状況から、日本の社会はまるで別の時代に入ったような大変な危機に直面しています。
幸いにも、湘南学園のあるこの地域は、小田急線や江ノ島電鉄の通行を保証するために電力会社がとった対応と同じ管轄の範囲内にあるため、「当面は計画停電の対象とはならない」との朗報が先日届きました。ですから新学期の授業を始めとする学校のスケジュールは、しばらくは予定通り進めていけそうです。ただし何か不測の事態がもしもおこれば、大幅な変更や制約を余儀なくされる可能性もあります。
不安な中での新年度の始まりですが、皆さんの理解と協力をお願いします。
特に節電には皆さんもしっかり協力して下さい。合わせて学校の備品や物品を大事に使い、校内の美化に努めるようにお願いします。

新年度の始まりに当たり、皆さんに強く願っていることを二つお伝えします。
まず一つ目です。大震災の打撃と社会の不安が続きますが、中学生の皆さんはそれに負けずに、教科の勉強におもいきり取り組み、学力と成績をパワーアップする一年間にして欲しいと思います。
この春に先輩達が残した大学受験の合格実績を、クラスエリア入口で見ましたか。
どうしても注目される東大の合格者が2名出ました。筑波大学や慶應大学の医学部とか、神奈川県から2人しか合格できないという自治医科大学など、一番難しい所にも現役で合格した先輩達がいました。普通クラスから早稲田と慶應、更には東工大まで現役合格した先輩もいたのです。
ここにいる皆さんも数年後には、大学受験という試練が待っています。いずれは自分が行きたいあこがれの大学や進路ができて、その合格を目指して全力で取り組むことになります。大きな夢を実現するには、地道で粘り強い取り組みが必要です。

中学時代のポイントは、「自分なりの勉強のリズムをつかみ、自主的な学習習慣をしっかり確立する」事です。これまでの生活と学習を振り返っていますか。新たな決意ができているのか、一人ひとりに問いたいと思います。
毎日の授業に集中する、宿題を前向きにやりきる、試験前でなくても復習や予習に取り組む。こうした姿勢が身についているか、自問自答してみましょう。
成績が伸びる人達に共通しているのは、決意です。集中力と持続力です。
限られた範囲の課題を大事にする「小さなパーフェクト」の姿勢がスタートです。
苦手な教科も、どうせダメだと決めつけずに、まず「小さなパーフェクト」を本気で心がけて、小さな成績アップを積み重ねていきましょう。

二つ目は、新しいクラスでの出会いを大切に、協力と助け合いを重ねて明るいクラスを築いて欲しいという願いです。
6年間を通じて「クラス替え」は毎年行われます。期待も不安も混じるクラス替えは、実は人間関係を広げていく大切な機会でもあります。
友達が少ないなあ、といま不安な気持ちの人もいるでしょう。でも初めて身近になった人にも積極的に声をかけてみましょう。友達に恵まれた人は、元気のない人が周りにいたら優しく話しかけてみましょう。異性のクラスメイトにも「おはよう」「さよなら」と挨拶し、「ありがとう」と声をかけてみましょう。小さな心がけが温かな輪を広げていきます。
担任の先生方も大きな願いを持って新たな運営を進められます。学年や学校の行事のあとで、「皆と一緒のこのクラスで良かった」と思えるようにしたいものです。
居心地が良くて活気あるクラス、時に意見の違いがあってもちゃんと話し合えて、楽しく取り組めるクラスをつくりたいものです。

さて最後に、もう一度大震災の話に戻ります。
原発の汚染はとても深刻です。土や海や農産物に広がる放射能の汚染がいつ収まるのか、遠い避難先で生活を送る人びとは、住み慣れた自宅にはたして戻れるのかと心配はつきません。関東甲信越地方だけで今も約2万人、神奈川県内にも約500名の人びとが避難しています。故郷に戻れるかも判らない不安の中で、新学期に通う学校も決まらずに暮らす、同世代の中学生が大勢いることを、心に留めましょう。

一方、大津波の被災地では、家族や我が家をなくした住民が、身を粉にして周りの人達を助けています。全国各地から緊急物資や義援金が続々と届けられ、様々な業界や団体や個人が支援に立ち上がっています。人命救助のために世界20か国近くから約千名もの人達がボランティアでかけつけてくれました。日本への支援活動を進める、またこれから予定の国・地域は、世界で140か国近くに及んでいます。
韓国セミナーに参加した先生からも、心に残る報告を受けました。
ソウルの国際空港では、皆さんが「頑張れ日本!」のたすきをかけて業務に当たられ、空港のあちこちに「頑張れ日本!」の横断幕が掲げられていたそうです。
訪問した高校では、日本の被災地の大きな写真が何枚も展示され、学校をあげて募金活動に取り組んでおられたそうです。広い世界は、情報も人間もちゃんとつながっていて、助け合っていけるんだと実感できたことは、これからの希望につながります。

皆さん、これまでは当たり前だった自分のいまの暮らしについて、もう一度大切に受けとめ直しましょう。自分のいのちと生活を支えてくれるご家族の人達や周囲の人びとに感謝の念を新たにしたいものです。また自分自身が社会に対して、これから先に何が出来るかについても考えていきましょう。
多難なスタートになりましたが、皆さんどうかこの新年度を充実した一年にしていけるように。一日一日を大切にして、自覚ある暮らしを築いていきましょう。
以上で、私からの挨拶を終わります。