第1450回 テレスタディを振り返って
4月はじめに緊急事態宣言が出され、休校措置が一定期間続くことが予想された段階で、湘南学園中高ではインターネットを介した学習指導(本校ではテレスタディと呼んでいます)のスタートを決めました。2年前からタブレット端末のトライアル導入をはじめ、昨年度からは高校1年生を対象にGoogleのG Suite for Educationに軸足を置いたBYOD(Bring Your Own Device・各自所有の端末を持ち込んだ上での利活用)に切り換えていましたので、どのアプリケーションを使えばどのようなことができるのかということについては幸いにして一定の知識・理解ができていました。しかし、全学年に一気に対象を広げた導入というのは当初は想定していなかったので、実際に開始する上では様々な困難がありました。特に、各種の設定等をおこなっていただく上では保護者の皆さまにも様々なご負担をおかけしてしまったケースが多々あり、大変申し訳ございませんでした。
本校のテレスタディは「安心・安全・適度」をモットーに進めておりました。全国的に休校が続いた期間中は、各種メディアでもオンライン授業の有効性に注目した報道が多くなされましたが、その一方で本校ではインターネット上でのつながりというものを信頼しすぎてよいものだろうかという議論を何度もおこないました。
オンラインでの会議等に参加なさったことがある方ならイメージが湧くと思いますが、リアルタイムで複数の方とつながっていてもネット上の回線の関係で特定の方の画像や音声が急に途絶えてしまうということが結構頻繁に起こります。こうした現象はWi-Fi環境の優劣にかかわらず、たまたま特定の時間帯に特定の地域の回線が混みあってしまうために起こることもあるのだという話も耳にしました。
こうした状況がもし授業中に起こってしまったら、特定の生徒だけがその瞬間その場に置いていかれるような状況になってしまうでしょう。そうなった場合、家にいて独りで授業に参加しているその生徒は必要以上に大きな不安を抱えてしまうのではないか。「先生、今ちょっと聞き取れませんでした!」と言える子ばかりではないだろう。そうだとすれば、リアルタイム型オンライン授業をおこなうのは人数的に限られた授業や希望者だけが参加する特別講座に限定し、通常の授業は動画配信や課題配信を中心に進めていった方がよいのではないか‥‥。これが本校の考えた「適度な」オンライン授業のあり方です。
ただでさえ大きな心配をかかえながらディスプレイに向かっている生徒の皆さんを前に、誰も置いていかず、不安にさせたくない。そんな想いが本校のテレスタディのベースにあったことを、ご理解くださいましたら幸いです。