第571回 『つながれない若者たち~希望ある未来へ』を観て(続)
前回の続きです。・・・・・・そうした若者の孤立や自閉傾向の中で、「つながり」をつける様々な新しい取り組みが紹介されました。
横浜のある自立支援団体では、長くひきこもり働いたことのない若者が家族から離れて共同生活するのを支援する活動をしています。改めて人間関係の作り方を学んでもらおうと、家事を分担し、相手の名前で呼び合う生活を求めます。イベントを通じてまず小さな仕事を担い、周りと声をかけ合って取り組み、達成感を持てる経験を積むのです。商品の陳列に工夫をこらし、接客の場面で手応えを得て表情の明るくなった30代男性の様子が印象的でした。
次に千葉県いすみ市を舞台に、地域の人口減少の打開へ向けて、若者の移住を促す行政の取り組みが紹介されました。その仲介で活動するNPO法人のスタッフの一人は30歳の女性です。都内のOL時代、早朝から深夜まで働きづめで、生活の大半を占める仕事が行き詰まり、自分を取り巻くつながりの希薄さに悩み、思い切ってこの地に移住して古民家を借り受けました。週末には地元の人たちが集まって楽しい交流の輪が広がり、手料理でもてなし合い、地域活性化のアイデアが出し合われ、他の若者と触れ合ってガイドする新たな役割に生きがいを感じて元気を回復したのです。
彼女が新しい生活でつかんだのは、人生はその気になれば新しいつながりや居場所をきっと得られること、世の中は広くてきっかけはいくらでもあること。だから都会の若者に「一度ここに来てごらんよ」「こんな仕事や生活も出来るよ」とのメッセージを持って生き生きと活動していました。
番組の出演者からは、「仕事は始めはつまらないことも多い」「転職したっていい」「絶望や失敗もくぐった方がいい」、「仕事に納得して適任かなって思えるのは30~40代のずっと後のこと」といった助言もありました。
「テストや成績に追われる偏差値教育が全国を覆って以後、社会の多様な価値を見つけにくくなった」、また「仕事に取られる時間が長過ぎて、多様な人とのつながりの発見に恵まれなくなった」日本社会の欠陥が指摘されました。
不安と閉塞感が強まる日本社会の現状を具体的に確認しつつも、遠い未来といっても一年一年の積み重ねであり、人と人とが紡ぎ合える場を多様な機会に設けていくことで、つながりは希望は拡げていけるのだという展望も示されていたと思われます。
そうした時代の中で生活し、そうした社会にいずれ旅立っていく在校生の諸君にとって、どのような学び、体験や交流が大切なのかを改めて考えてみます。世の中は広くて、素晴らしい人生を築く人たちが大勢いること、世の中には優れた取り組み、粘り強い仕事、貴重な協力関係がたくさんあることを伝えていきたいです。大丈夫だよ~君にも希望の将来が拓かれるから、とのメッセージを基調に送り続けたいと思います。
番組ラストに街頭の若者から、2030年に向けた希望の決意が示されていました。・「2030年、職に就いて安定した家庭を持つ!」、・「人と関わる仕事を持って、困っている人を減らしたい!」、・「オレは家族を持って少子化に対抗する!」、・「深刻な時代をみんなで笑って乗り越えたい!」・・・・・・それぞれに共感しました。特に印象的だった最後2人の言葉を紹介して終わりにします。
・「私はネットだけに頼らず、直接人の人脈を広げて、今の世の中を明るくしたい!」
・「自分から積極的に人に話しかけ、沢山の人と関わりを持ち、楽しい毎日にする!」