第577回 将来の仕事をつかむ旅路~自分の場合には
登下校でひとりの在校生と一緒になり、歩きながら話す機会があります。
高校生とは、志望する学部・進学先や、希望を持つ将来の就職・仕事の方向などたずねてみることがあります。高3や高2の諸君は具体的に目標や夢を持っている諸君が多いなと感心することが少なくありません。若者の就職や雇用をめぐる厳しい情報の多くなった時代の反映とも感じられます。
本校ではいま高校で「こだわりの第一志望」というキーワードが共有されています。大学受験で明確な目標をそれぞれが持ち、学年の仲間と先生達のスクラムで団体戦で挑もう!ということを大切にしています。
将来の職業選択については、そこまで明確に掲げることはなかなか難しいことでしょう。でもぼんやりとでもその夢を抱き、温めて具体化できるならば、「こだわりの第一志望」の確定にも弾みがつくことでしょう。
振り返ってみると、自分の場合は高校1年の頃に進路の方向をだいたい定めたように思います。父親のたどった厳しい軌跡を反面教師に、自分が生きがい、働きがいを持てそうな分野を探していました。本が好きだからそこから離れない仕事をできればと思い、“出版とか教職ならば元気で働いていけるかもしれない”と思いたちました。中高の教員なら社会科かなと思い、小さくていいから良い本を出す出版社に入れたらともあこがれました。
・・・・・・大学生活を経て、第一志望の職種は国家公務員のある職種になり、そこが最後に届かず右往左往する時期を経て、卒業後はまず零細出版社に入社しました。優れた書籍を次々と発刊する、志の深い出版社でしたが、そこで改めて教職につきたい気持ちが高まり、アルバイト生活でつないで私学の教員になって今日に至っています。
現在の日本社会では、以前は当たり前だった「終身雇用・年功序列」の雇用や賃金のあり方は大きく変容し、グローバルな企業・国家間の競争のもとで、非正規雇用の割合が激増し、労働者の生活と仕事をめぐる新たな困難が広がっています。
「青年よ大志をいだけ」と簡単にはいえない状況があります。でも自分の人生を大切に考えて、自分が輝ける分野を探っていく意欲が、高校生・中学生の諸君には求められています。在校生の諸君には、「きみの良さを生かせる仕事、あなたの輝く人生の拠点にぜひ出会ってください」と強く願うものです。