第591回 “つながっていても孤独”~メール時代の人間心理(1)

2012年12月19日


 NHK教育テレビの話題番組「スーパープレゼンテーション」で、先日気になる講演を視聴しました。『つながっているのに孤独?』という題で、米国マサチューセッツ工科大学のシェリー・タークル教授のスピーチでした。
 日本の若者の現状、在校生をとりまく社会環境を理解する上で、斬新な視点やヒントに満ちていたので、紹介したいと思います。

 シェリー女史は、「デジタル機器が人間の心理に及ぼす影響」についていち早く研究に取り組んだ心理学者です。家庭にパソコンが入り、インターネットが普及し、ロボットやソーシャルメディアの用途が社会に広がったこの約40年間の軌跡を分析してきました。人間生活をより豊かにするとして肯定的だったシェリー女史が、近年一転して「Connected、but alone?」とその弊害を問題視し、テクノロジーは大切だし大好きだが、人間をダメにする危険をはらんでいると提起するようになりました。

 アメリカでも、食事中に会議中に、友人と一緒にいても、ケータイを離せない、頻繁にメールを続ける人たちが増えてきたそうです。大事な会議中にアイコンタクトをとりながらメールを同時に行うスキルにたけた会社員の姿まで普通になったと指摘されます。子ども達がお互いをないがしろにして「一緒にいるのに一緒に遊ばない」でケータイに夢中になる様子は、一昔前にはなかった光景です。
 小さなケータイが人間に与える心理的影響の大きさ、人間の行動も性格も左右する威力にシェリー女史は注目し、“Alone Together”(一緒にいても別々)の人間関係が普通になりつつある、と問題提起するのです。(明日へつづく)