第200回 プロフェッショナル・仕事の流儀

2011年2月25日

NHKの『プロフェッショナル・仕事の流儀』というテレビ番組があります。毎回ある仕事にスポットライトを当て、その仕事に情熱を注ぐ達人、いわば「プロ中のプロ」の方に取材してまとめるドキュメンタリー番組です。

 

その方の現在の仕事ぶりはもちろん、これまで様々な苦労を乗り越えてこられた軌跡や、その仕事で大切にしている信念などを、映像とインタビューで多角的に紹介します。放送時間は毎週月曜日の夜10時から(再放送は水曜日の0時15分から)で、毎回ではないですが筆者もよく観ています。

 

深い感銘を受けることが多いお薦めの番組です。高校生や中学生にもぜひ観てほしいなとよく思います。この現実の社会の実例から具体的に、働くことの大変さや楽しさ、奥深さについて学び、いろんなヒントを得ることができると思われるからです。

 

今週月曜日は、「魂のデパ地下、情熱の売り場~百貨店食品フロア開発・内山晋氏」でした。今回の内容を大まかにまとめて紹介してみます。
苦戦が続くこの業界で、内山氏がリニューアルしたデパ地下は、大幅に売り上げを伸ばして注目されます。“あらゆる過去の常識を疑う”は内山氏のモットーの1つです。お客さんの見通しと買い回りを優先して付設する厨房を他階に全て移設したのも常識破りでした。増加するテナントの選択と配置、揃える商品群を1から検討し直し、業者には率直に要請の話をし、部下には時期にフィットした商品の充実を指示します。“心のハードルを上げ続ける”大切さを語り、誰よりも前のめりに仕事に打ち込むのです。
この冬渋谷・西武店の大リニューアルに取り組む様子が描かれました。立地の不利も踏まえてどこに重点を置いて展開するか熟慮し、販売員達の意識改革を進めます。よりテナントの中に深く入って「共に商品を売っていく姿勢」の定着を図ります。

 

“売り場に魂を”が内山氏の信念です。自分の仕事に関わるあらゆる人達のやる気を高める「コミュニケーション力」のすごさに感服しました。老舗のテナント経営者にヒントを示して新商品開発の意欲を引き出し、テナントの従業員や部下の社員、パートさん達にもどんどん声を掛け、時には自分から動いて見せます。早くから来て床の雑巾がけを率先し、開店と同時にお客さんへ心をこめた挨拶を率先します。“何においても自分の情熱をぶつけることが大切で、それによって周りの人が動き出す”シンプルな持論を見事に行動で示す姿が印象的でした。
筆者と同世代の方ですが、疲れを知らぬ笑顔で溌剌と動く姿に頭が下がる思いでした。バブル崩壊後のデパート業界の長期苦戦で多大な苦労や行き詰まりを経験し、それも糧に新たな希望を持ってバリバリに働かれる姿に、学ぶことがたくさんありました。振り返って自分の仕事について、また私学の教職員がチームとして強めるべき努力について、今回もいろいろと考えさせられました。

 

おりしも「そごう八王子店」が来年1月末に閉店するとのショックなニュースがありました。他の百貨店が次々と撤退し、八王子駅前では唯一30年近くも駅の顔だったあのお店まで閉じるとは! 立川駅前の大改造、周辺エリアの大店舗急増など、マーケットの激変に伴う逆風が強すぎたようです。そごうと西武は二年前の新合併後も様々な苦労を重ねているようです。
番組に出た内山氏は、この事態の中でまたどんなチャレンジをしていくのでしょう。番組を一緒に見た妻と、リニューアル後のデパ地下に行ってみたいねと話しました。

 

人気番組で、いつもご覧になる方々もいらっしゃることと思います。筆者も気になる回は録画して息子と娘に視聴を勧めています。お子様のいる読者の皆様にもお勧めしたいと思います。