第669回 在校生キラリ~詩集デビューを祝して
今日は、自作の詩集が出版されたばかりの、ある在校生について紹介します。
先日、日本文学館から刊行された『17 裸足で残した唄々』という詩集です。著者は「初見誌音」とあります。これは彼女のペンネームです。
「“17歳”の今が、ここに詰まっている! 眩しいほどの瑞々しいタッチで描かれた現役女子高校生によるリアルタイム詩集」と本の帯に記された、すてきな詩集です。・・・・・・〈恋〉、〈友〉、〈こどもとおとな〉の3章に分かれ、「君のベンチ」、「糸電話」以下、40近い詩が収録されています。
一読して、素直で温かな、飾らない切々とした感情の表現に共感しました。高校生らしい言葉でていねいに紡ぐ世界には、時には大きな憧れもあります。たとえば「たんぽぽ」という詩にこめられた切ない思いが印象的でした。
彼女はいま高校3年生です。詩作は学園小4年生の時に始めました。担任の先生の指導で日記を書くようになり、題材が足りない日には思ったことを詩にしてみてはという助言を受けて、日記帳に記すようになったそうです。先生のコメントが励みになり、そのひとつを投稿してある本で採用され、詩作の楽しみが心に残りました。
中3になって、バレンタインデイに因んだ特集で「恋心」の詩を応募して入選しました。以後ずっと、詩をつくることは生活の大切な一部になりました。将来どんな進路を選ぶのかと考え出した時に、“自分には詩がある”との自覚が芽生えたそうです。書きためた自作の詩を出版するチャンスを得て今日に至りました。ふだんはバスや電車の中でも思い浮かぶ言葉をメモするのが習慣になっているそうです。大切な友人の誕生日にふたりの大切な想い出を描く詩を贈ることもあります。ただしこれは同性の仲良しで、恋愛中の異性にはまだ恥ずかしくて贈れないそうです!
自分の気持ちを1つの詩にまとめる作業は、たいへんだけど楽しいことです。パッと表現がわいてくる時もあれば、じっくり考えて言葉を探す時もあります。余分な語句を削り、語句を修正したりして、やっと納得できる詩を仕上げる嬉しさは大きい、との話に共感しました。
ペンネームには、「初めて見た物でも音のようにおぼえておく」という気持ちがこめられているそうです。言葉の力を信じて、お互いの言葉を大切に理解し合える友達や恋人とのつながりを大事にして生きていきたい、と語ってくれました。最近読んだ中では、柴田トヨさんの詩作に感動したそうです。また詩をメロディーに乗せて届けられる歌の力も話題になりました。エレクトーンも習ったりして音楽も大好きなので、そちらも大学進学後にチャレンジしてみたらと助言してしまいました。
受験生である彼女は、作家志望も視野に入れて自分のスキルを深めていける大学・学部の志望を明確に語ってくれました。明治大学が第一志望校でした。その夢の実現を応援します。これからの彼女の活躍を楽しみに見守っていきたいと思います。